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んー…。 目立つのか目立たないのか、分からない人だな…。 メッセ街にて。 toroは少し困っていた。 昨日辺りから、ふと思い出したことがあって、ある人を探している。 目撃証言は結構見つかる。 どうも王宮を中心に、いろんなところをぶらついているらしい。 だが、もっと突っ込んだ話がどうも出てこない。 「この前店先で見かけたなぁ…」とか、「それっぽい人見かけた」とか。 スピナーにも結構聞いたけど、会話をしたという人も見つからなかった。 神出鬼没なあの人らしいと言えば、らしいんだけど…。 とりあえずあの人がいそうなところ、と思って歩きまわってるけど、見つからない。 参ったなー。 大臣にわざわざ頼むのもちょっと気が引けるから、自分で探そうとは思ったんだけど。 とりあえず午後いっぱいは探してみよう。 さて、っと。 メッセ街を見回ってみたけど、いまいち見つからない。 まぁ、ペン屋とかには寄らなさそうだし。 期待薄っていえば期待薄だったかなー。 「…ん」 PM。 「お」 これはラッキー、だな。 仲のいいスピナーから、目撃情報が入った。 しかも、リアルタイムで。 ペンを構え、素早く地面を蹴る。 「…いたいた」 目的の人物が出てきた。 出てきた建物は、煙草店。 僕は吸わないから詳しくないけど、建物の古さから見て老舗という雰囲気が漂っている。 なるほど、そういえばあの人は煙草をよく吸っている。 消耗品だから、定期的にどこかには買いに行くはずだ。 さて、と…ほとんど話したこと無いから、少し緊張する。 フレンドリーな人だと聞いてるから、そう気負う必要はないと思うけど…。 「すいませーん」 「…ん? おお、えーと…toro、だったっけ」 「そうです。知って頂いて光栄です。 えーと…お久しぶりです、がおさん」 「がお」こと、G-Ryzer。他でもない、僕の探し人だ。 「以前、お話したことありましたよね」 「ああ、なんとなく覚えてるぜ。 そっちはすっかり有名人になっちまったようだな」 「そんなことないですよー」 覚えてもらってたか。これなら話しやすいな。 「んで…何か用か?」 「はい。えーと、伝言を預かってます」 「…伝言?誰から?」 「あきまるさんです」 「お」 黒い眼鏡の奥のがおさんの目つきが、少し変わる。 「あいつ戻ってきてたのか?」 「いや、そうじゃないです。 僕がこの前、あっちにちょっと行ったとき、たまたま会ったんです」 「ああ、そうなのか。 で、なんて言ってた?」 ポケットから煙草を取り出して火をつけながら、がおさんが聞く。 「えーと…この伝言聞いたのが数日前なんですけど…。 あと1週間か10日か…それくらいで戻ってくる、って」 「…そうか。あいつも戻ってくるのか」 煙をふー、と吐き出して、がおさんが言う。 「それで、こっちついたらすぐ連絡するから、迎えに来いって言ってました。 頼まれてたもの、すぐに渡したいから、って」 「…あー、そうか。 別に急がなくても良いんだけど…あいつも真面目だな」 がおさんが少し苦笑しながら言う。 「以上ですけど。ひとつ聞いてもいいですか?」 「ん?」 あきまるさんに聞いても教えてくれなかったことを、聞いてみる。 「頼まれてたもの、ってなんです?」 「ああ…たいしたもんじゃないぜ。 ただ、久しぶりに見てみたいなーって思っただけで…わざわざ言うようなもんじゃねーんだ」 「んー、そうですか」 あきまるさんと同じような返答だ。 気になるけど、こう言われちゃうと、詳しく聞き返せない。 「じゃ、俺、いくとこあるから。 伝言ありがとうな」 がおさんが手を振って去っていく。 よし、これでやることはとりあえず終わった。 んーと…どうしようかな。 丁度近いし、たまにははさみさんとこでも覗いてみようかな。 |
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scissor'sが、髪止めを手にとる。 鋏を模したこの髪止めは、単なる髪止めではなく。 彼女の、戦闘の際の「武器」である。 「水無、援護お願いね」 髪止めが、scissor'sのペンの動きとともに巨大化して、1mを超す大きさの「鋏」と化す。 「…ん」 構えて、相手の出方を窺う2人。 対するザコテ達も、動かない。 先に痺れを切らしたのは、scissor's。 跳ねるように飛んで、数人の集団の方へ向かう。 右手でペンを操りながら、左手の鋏を高速で繰り出す。 刃と刃がかみ合う音が、幾度も響く。 傍目から見れば、鋏というよりは、斬撃が飛んでいるように見えるだろう。 だが、刃と刃のかみ合う音は、相手がかわしていることの、証拠でもある。 「…速い」 Mizmが呟く。 scissor'sの波状攻撃が止むと、即座に相手の攻撃が奔った。 四方八方からの攻撃。 「…っ」 回避をしようとしたscissor'sの動きが、一瞬止まる。 避けられない。 あらゆる方向から攻撃が飛んできている。 scissor'sが一瞬動きを止める。 同時に、攻撃の一角が、消える。 Mizmが動いていた。 正確な防御でscissor'sの逃げ道を作る。 素早く包囲網から脱したscissor'sは、Mizmと背中合わせになる。 「いい連携してくるね」 「…うん」 2人に向かって、一斉に火球が飛んでくる。 示し合わせたように、四方八方から、同時に。 Mizmのペンが、それに対し正確に反応する。 スピードを殺して、丁寧さを重視。 攻撃に対して、より効果的な魔力を生みだす。 防御に関しては定評があるMizm。 数人がかりの大量の火球にも、正確に対処できる力量があった。 「…後ろに、第2陣…はさみ、お願い」 「うん、了解」 火球が一斉に消える。 瞬間、その裏に構えていた2人の男が、scissor'sに向かって切りかかる。 斬撃。しかし、飛ばさずに、直接叩きこむ気のようだ。 scissor'sは、上等とばかりに鋏を構えると、まずは横一文字に鋏で薙ぐ。 鋭い攻撃に防御する2人。 片方の体制が揺らいだのを、scissor'sは見逃さない。 一瞬で距離を詰め、鋏を閉じて、鋭く突く。 紙一重で男はかわす。 かわされた、瞬間、鋏が動きを変え、横に振られる。 「峰」での強打。 1人片付いた―と、scissor'sは一瞬思った。 が。 scissor'sの鋏が、男の直前で止まる。 「…っ」 何かに引っかかったような感触。 鋏の先端に、草の弦が巻きついていた。 「…え?」 一瞬虚を突かれるscissor's。 その隙に、2人は素早く距離をとる。 「…はさみっ」 「あ、うん。ごめん。 ちょっとびっくりしちゃって」 弦を素早く切断し、scissor'sは再び構える。 一瞬、NIKoo君かと思ったけど、違う。 NIKoo君のとは、雰囲気も力強さもまるで違う。 「…ただの真似、気にしちゃだめ」 「うん」 scissor'sはうなずく。 そう、ただの真似ごとだ。 自分より上手いスピナーに憧れる、というのは誰しもあることで。 その人に似たスタイルを目指し、真似をしてみるというのも、多くのスピナーが経験していること。 けれど、真似ではスピナーは、本当の意味で成長しない。 自分で自分の回しを作る、そういう感性がなければ、上級スピナーへは進んでいけない。 だから、さっきのNIKoo君に似た魔法を使ったスピナーも、まだまだ。 自分のスタイルを見つけれていなくて、実力はそこまである訳じゃない。 …けれど、そんなレベルなのに…。 scissor'sは、相手の攻撃を受けながら、少し困惑していた。 ひとつひとつの攻撃はたいしたことないんだけど、連携がものすごく上手い。 まるで、1人のスピナーから繰り出されるように、計算された攻撃が飛んでくる。 2対6、という人数差は、普通なら問題にはならない。 スピナーとスピナーの勝負は、いくら束になっても、ある程度実力差があれば、敵わない。 この戦闘は、お互い正攻法でしっかりと攻め合い守り合いをしているから、なおさらだ。 なのに、なかなか勝負がつかず、「いい勝負」になっている。 「水無」 「…うん。手ごわい…」 水無も同じ感想のようだ。 今まで見たことのない連携。 それが、実力差を埋めている正体だろう。 こういう相手は初めてだから…手探りでの戦闘になりそう。 scissor'sが、鋏を持つ手にぐっと力が入った。 |
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「あれ」 SPSLの前にきたtoroだったが、「閉店」の表示がされていた。 「休みかー…残念」 あんまり休みは多くないんだけど、不定休でたまに休みになる。 多分はさみさんの私用とか、そういうんだろう。 「あら、toroくんじゃないのー」 「…あ、ども」 近所のおばさんらしい2人組に声をかけられる。 「はさみちゃんのとこ、今日はお休みみたいねー。 商店街でお買い物してるの見かけたわよ」 「あー、そうなんですか」 「男の子とデートかしらね、裏路地の方に入ってったわよ」 ニヤニヤとしながらおばさんが言う。 苦笑を返す。それ以外思いつかない。 「デートって、Mizmちゃんも一緒だったじゃないの。 3人だったわよ」 「はぁ…」 …3人? なんだかよく分からないが、僕が気にする話ではなさそーだ。 この辺りの商店街、か。 あっちにある、小さい商店街のことだろうな。 あそこの裏路地、っていうと…かなり狭いとこだったような。 あんなところで何してるんだろう。 なんとなく、その方角に目を向けていると。 …? 気のせい、かな。 ペンをさりげなく構えて、控え目に回す。 「…っぽいな」 伸ばした探知魔法。 戦闘の雰囲気を感じさせる結果が返ってきた。 …はさみさんとMizmさんがいるなら大丈夫だとは思うけど。 最近物騒だし、一応見に行ってみよう。 おばさん2人組に軽く頭を下げた後、地面を蹴る。 建物の屋根の上にあがって、周りを見渡す。 「…あれ」 戦闘はしていた。 遠くの方にそれらしい姿が見える。 路地裏で小競り合いしてるなら、上から行った方が都合がいいかなーと思ったのだが。 どうも、もっと奥、空地の方でやっているらしい。 いくつもの建物の屋根を拝借して、近づいていく。 近づきながら観察・探知。 状況はなんとなくつかんだ。 2対7で、面子はたぶん例のザコテ達。 戦況は、ザコテ達がどうやら押しているようで、2人は本調子じゃないのかもしれない。 これだと、一気に奇襲して、出来れば全員捕まえたいところだけど…。 ある程度近づいてきたところで、スピードを落とす。 んー…。 思案していると。 「…っ」 7人が、さっと散った。 「まずっ」 あわてて追おうとするけど、反応が早かった。 …んー、逃げられたな、こりゃ。 仕方なしに、空地にストンと着地する。 「toroくん」 はさみさんが少し驚きの混じった表情で言う。 「ども、お2人さん。 んー、逃げられちゃったか…」 「…突然、『邪魔が入った』とか言いだしたから…何かと思ったけど…toroかぁ」 「そのようで。 えーと、なにもんです?」 「ちょっと、よく分からない…。 1人に呼び出されてここに来たら、いきなりけしかけられて」 「んー…そうですか…」 どうしようか。 完全に確認はしてないけど、細かいのがたくさんいた感じから見て、 最近の「ザコテ」の問題と関係あるのは間違いなさそうだ。 「えーと、ちょっと事情詳しく聞きたいんすけど、いいですかね? 出来れば王宮で…coco_Aさん辺りと一緒に」 最初はちょっと驚いたような顔をした2人だったが、すぐにうなずいてくれた。 |
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路地を素早く走りながら、2人組が話をしている、 「…邪魔者、ですか?」 「ああ。toroが近づいていた」 「はぁ…なんであの人が」 「まぁいい。収穫はあった。 もう少し調整すれば、十分実戦で役に立ちそうだな」 「はい。いい感じで、共有できてましたよ」 「あと数日だな…。 数日内に、動くぞ」 「はい」 |
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