投下するスレ 02 | |
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「ありがとう。じゃあこの後もよろしくお願いします」 とりあえず警備の手配をしてきた。 JapEnCupという丁度良い理由もあったので、特に疑問も持たれずに警備の強化が出来た。 王宮の警備は勿論重要事項であるが、担当にトップレベルのスピナーは少ない。 少数の精鋭が多くの兵をまとめているイメージで、その精鋭も当番制。普段は1人か2人だ。 スピナーは普段からある程度周りの観察をしているし、 警備という配属をしなくても有事の際は行動してくれる、という判断からである。 とはいえ、やはり担当者の存在は安全上必要だ。 そういう意味で、今日はよくなかった。当番が彼だった。 嫌な予感がして警備に聞いてみた所、案の定な答えがあった。 「なんだか、朝から『何か殺気を感じる』とか言って出てっちゃいましたけど・・・・・・」 ayatoriさんも塔なんかに登れる訳だ。 普段、「精鋭」は王宮の中心に当たる塔に居るから、しっかりしてくれていたなら阻止できたかもしれない。 ため息をついていると、階段を下りてきた2人と出くわした。 「あ、調査終わりましたか?やけに時間がかかりましたね」 「やっぱり気づいてませんか・・・」 SEVENがなんだかため息をついている。一体なんだ? 「んー、ここあさんも気づかないってなると、やっぱこーみょーに魔力を隠してあるね。 まあとーぜんっちゃとーぜんかもしれないけどさ」 「何かあったんですか?」 「ええ、とりあえずここでは・・・場所を移しましょう」 |
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執務室に移動し、2人はcoco_Aに塔の上であったことを説明した。 「信じられません。王宮内の戦闘に気づかないとは・・・不覚でした。申し訳ない」 「いえいえ・・・相手の隠蔽がそれだけ上手いってことです」 「そこまですっげー魔力を出してた訳じゃないですし。 それに、ちょいとこれは特殊すぎです」 「そういうことだろうな」 執務室に入ってくる人物。 「Saizen?」 「さっき彼等と会って、話は聞いている。 私も感じれたのは『何か起こっている』程度のものだった。戦闘とは思わなかった」 「そうですか・・・そうなると、相手は思ったより手ごわいという事になりますね」 「ああ。SEVEN、例のものはcoco_Aに見せたのか?」 「あー、まだです」 SEVENが、先程の装置を取り出す。 「これが、魔力を生む装置ですか」 「ああ。こんな言い方はどうかと思うんだが・・・悪魔の装置だ」 Saizenが、なんとも苦い表情で言った。 スピナーには、守るべきしきたりがいくつか存在する。 そのひとつに「旋転は人の手から生まれるものであれ」というものがある。 つまり、人力以外での魔力の生成の禁止である。 スピナーは皆自らの手でペンを回し魔力を用いる事を誇りに感じており、 理論上の可能不可能を抜きにしてこのしきたりを破るものなど存在しなかった。 「やれるもんなんすねー。俺はそんなんむりだと思ってたんですけど」 toroがぼんやりと感想を述べる。 「確かにそんな技術が存在した事自体も驚きだ。 だが、こんなものを作るような阿呆が敵だということの方が驚くべきだし、脅威だ」 「そうですね。これは、本気で対策を練る必要があります」 きっとさらに表情を引き締めたSEVENが言う。 「対策の会議を開きましょう。JEB全体に関わる話ですから」 「SEVEN、その事なんだが・・・このことはあまり広めない方が良いと思っている」 Saizenが厳しい表情でSEVENの案を否定した。 「何故です?私達のような、たまたま居合わせた人員で話す範疇を超えています」 coco_Aの反論に対し、Saizenはじっと机の上を見つめた後、低い声で言った。 「ayatoriが、敵になっているのだ。他にも身内に敵がいる可能性が少なくない」 全員が沈黙した。 「あのayatoriがJEBの敵になるなど想像できた奴がいるか? なら、どの人物も敵になりうるということだ。 勿論、この人数で敵対しようというのは無理がある。 だが、この話に加える者は、人数・人物ともに限定する必要があるだろう」 ふたたび沈黙。 重い雰囲気を破って、toroが提案する。 「たしかにそーっすね。じゃ、味方を選定していきましょーか。早い方がいいでしょ」 「そうだな。まず、王宮内の警備についてだな。今居る4人である程度形になると思うのだが、どうだ? 王宮に居ても自然だし、普段から警備は居るのだからそう多くもいらないだろう」 「そうですね、あまり警戒を悟られないぐらいで丁度いいかと思います。ではそれで行きましょう。 他に、何をするべきでしょうか?」 coco_Aの発言に対し、SEVENが答えた。 「相手の調査ですかね。ayatoriさんがどこかに潜伏しているなら、こちらから見つけられれば有利になります」 「そうだな。守りばかりは好ましくない」 「じゃ、人をだれにするか・・・。 敵対した時のために戦闘力はひつよーですね」 「ああ。それでいて信頼が置けて、かつ町中歩き回っても自然な人物だ」 「町中ねぇ・・・」 普段から街中に居る人物を思い浮かべる。 一流のスピナーは、王宮内に入り浸っていたり、どこか旅をしていたりが多いため、楽な選定条件という訳でもない。 話の中で、2人の名前が挙がった。 「このコンビって仲良かったですかね?」 「まあ、悪くはないでしょう。ある意味似たもの同士かもしれませんし」 「あ、目立たないっていえば別なタイプもあります」 SEVENが思いついた名前を言う。 「nekuraさん。あの人なら、人前に出ずに町中捜索できる気がするんですけど」 |
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計算は、夕方になるのを待ってPOTATOMAN、通称「いも」の所を訪ねていた。 nekuraと接触をとるためだ。 「(やっぱり隠密行動となると彼が一番だ。なんせ普段から隠密行動しているようなもんだし)」 何より、その独創的な旋転は国内トップレベルの力を持つ。 タイプ的にもこういう仕事に適している。 nekuraは、人との接触を極端に避けるスピナーだ。 夕方まで待ったのも、普段は昼夜逆転で生活していると聞いたことがあるからだ。 そんな話は嘘の可能性も高いのだが、気分屋の彼のことだし、気遣うにこしたことはないだろう。 「はい、どなた?」 東街の一軒家。ノックに対し、人のよさそうな顔の少年が顔を出した。 「え、計算さん?どうしたんですか?」 「ああ、いきなり尋ねて来て申し訳ない。 ちょいと、話があってね。上がらせてもらっていいかな?」 「構いませんよ。どうぞどうぞ」 |
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「煮っ転がし食べます?」 「いや、いい。そういう雰囲気の話じゃないもんでな」 「そうでしたか。では、いったい?」 純朴な性格で知られるこの人が、ayatoriの仲間という事はないだろう。 家に入った後、隠れてペンを回したりして牽制するも、気づいて警戒するような反応はない。 計算は今までの事を話した。 いもは、なんとも驚いたような怖いような表情を見せる。 「そういう訳で、俺は今単独でayatoriを追っている。情報集めにnekuraさんの協力が欲しい。 だが、なんとも接触をとる方法が見つからなくてね。君を尋ねた」 「なるほど」 いもがうなずく。その時、ノックの音が聞こえた。 「はいー?」 のん気に返事をして玄関に向かういも。 窓から外を窺うと、玄関の前には見知った人物が居た。 「toro?」 |
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「じゃー、計算さんに先を越されちゃった形になりましたねー」 「そうなるかな。お前もcoco_Aの使いで来たんだろ?」 「はい。nekuraさんに協力のお願いです」 「やだなー。僕はねくらのマネージャーとかじゃないんですよー。 まぁ、話はしてみますが・・・期待しないでくださいね?」 そういうと、いもは席を立った。 「誰か近くに居ると、警戒して出ない事があるので・・・すいませんが、ここでおまちください」 10分ほど経ってから、いもが帰ってきた。苦笑いをしている。 「すいません、駄目でした。 『興味ない』とか言っちゃって」 「そうか。そういう答えも予想していたよ」 計算は表情を変えずさらりと答える。toroも同じである。 「んー、でも彼のことなので、ひとりで何か調査なり始めると思います。 あんなんですが、JEBのこととかものすごく考えてるタイプなんですよ」 「なら自由に動いてもらっていーんじゃないかな。 なんかあったら連絡くれるでしょ」 「そう思います。多分僕に何か言ってくると思うんで、そしたらすぐお伝えしますね」 「うん。 あー、それで、いもくんにもーいっこお願いがあるんだけど」 「はい?」 「明日から計算さんと行動してくれない?サポート的な」 「え?」 「ん?」 2人虚を付かれたような反応をする。 「いや、今日会議してて計算さんも単独行動は好ましくないなーって話になって。 まぁnekuraさんから連絡があった際にすぐ計算さんに知ってほしーってのもあるんだけど、 いもさんなら実力的にもタイプ的にも適任かなーって」 なるほど、と計算はひとつうなずき、 「単独が危険というのは事実かもしれない。 いも、お前がいいならお願いしたいが 」 「あ、はい、大丈夫です。予定とくにないです」 危険かもしれない話に予定の有無で快諾するいもに少し苦笑しつつ、toroは安心した表情を見せた。 「じゃ、決まりですね。いやー、計算さんへの用件もいっぺんに済んで助かりましたよ」 「そうだ、toro。JEBの方の動きは決まったのか?」 「あー、はい。とりあえずは極秘裏に行動って決まりました。少人数で。 俺にここあさんにせぶんくんに、あとさいぜんさんでとりあえず王宮内の警備。 あとは、調査兼遊撃隊みたいな形で街中を廻ってもらう人を配置することになりました」 一体誰だ?という2人の視線を受けて、toroが言う。 「kUzuさんにPespさん。2人とも了解してくれましたよ」 |
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日付は変わり、日差しも強くなってきた頃。 「お前かよっ!」 「俺ですが?何か?」 「せっかくJEBの為に働くってなったからさ、もっとこう緊張感のある相手とやりたかったんだよ。 よりによってなんでPespなんだよ・・・」 「いいじゃねえか!Pespも頑張ってるんだよ!応援してやれよ!あいつは凄いんだよ!」 「自分で言うなよ、アホ」 「P!E!S!P!われらがPesp!フゥゥゥゥゥ!」 「(本気でうぜえ・・・)」 王宮の門の前。 昨日SEVENから事情を聞き、時間通りにやってきたkUzuが待つこと30分。 鼻歌を歌いながらやって来たのは、この上なく陽気な男であった。 「まーいい。ちゃんと話は聞いてるんだよな?」 「いいとも!」 「わーったよ。じゃーとりあえず街の方行こう。ここにずっと居るのも不自然だろ」 確かに普段からこいつは町で見かけるけど、こんなんで大丈夫なのか正直不安だ。 実力があるってのも事実なんだけどさ。 「どこを見るは、俺等の自由でいいんだよな。お前生きたいところあるか?」 「特にはございやせんな」 「そうか。潜伏、っていうとやっぱ外れの方か?」 JEBでは王宮を中心に放射状に街が広がっている。 王宮の近くの方が活気があって治安もいいから、少し遠くのほうが潜伏には適している気がする。 「いや、ここはあえて東街だな。 あえて王宮の近くで好機を狙っている可能性があるし、その場合早急に発見した方が良い」 おお。なんかまともなことを言い出した。 確かに潜伏された場合の危険度は王宮の周りの方が上だ。 「何より、遠くに行くのが面倒くさい。それに服とか色々見たい」 二言目は無視していいだろう。確実に。 「じゃー東街でいい。さっさと行くぞ」 「いいとも!」 「日本語的におかしいだろ、それ」 |
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東街に着いてから1時間ほど。 2人は街を歩いてayatoriの気配を探すも、見つからない。 「んー。やっぱみつからねーな。ここには居ねえんじゃねえか? ま、居ても分かんねえだけかもしんねえけどな」 「魔力を隠すのとか上手い気がするな、ayatorは。横領とか揉み消すの得意だし」 「適当なこと言ってんなよ、馬鹿」 その時、kUzuが足を止めた。 「今、なんか気配がしなかったか」 「ん?」 kUzuが一軒の大きな店を指差す。家具屋か何かのようだ。 「定休日・・・木曜日が定休日か、あんまないような気もするな」 「ニートなんだ。毎日が定休日なんだよ」 「はいはい。見てみるぞ」 インフィニティを交えたコンボ。店の内部に意識を集中させる。 「んー。駄目だ。魔力のかけらの気配もねえ」 「そうか。じゃあ怠け者の店主に一発殴りこみしてくるわ」 「アホ、やめとけよ」 「こんちゃー!ニートは犯罪!社会のゴミですよー!」 「馬鹿、お前本気で」 Pespが戸を開けて、中に一歩踏み込んだ。 その時、kUzuは感じた。Pespの右手、魔力を僅かに帯びている部分の魔力の気配が、消えた。 「っ!?」 これは・・・ 「kUzu」 「ああ」 「中、雰囲気おかしい気がしなくなくもなくない」 「分かってる」 意識を引き締め、店内に入っていく。 誰かがいるような気配は無い。 探し始めて1時間足らず。見つかるには出来すぎだ。いくらなんでも。 だが、この雰囲気は・・・ 「やあ」 少し開けた仕事場のような所に足を踏み入れた瞬間、2人に声がかけられた。 「ちょっとした誘いに反応してくれたね。嬉しいよ」 穏やかに笑う少年。 ayatori。 PespとkUzuは、ペンを構えた。 |
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時間は少し戻り、2人が東街に向かった頃。 王宮を挟んで反対側、比較的東街より古い建物が多い西街の一角では、威勢のいい声が飛んでいた。 「らっしゃーい!らっしゃーい!今日は本気で良いタコが入ってますよー!」 「タコ?」 「お、らっしゃーい。本当に今入ったところですから、新鮮っすよ。 刺身がいいんじゃないですかね?こいつはやわらかいっすよ」 「そうですかー。じゃー頂こうかな。4人分、切ってもらえます?」 「了解しました!」 そういうと、店主はペンを取り出しガンマン系のコンボを繰り出した。 タコの足が数本切り取られ、さらに細かく切られながら皿の上に美しく盛られていく。 「すごいですよねー。 それで解体とか店頭でやったら売れるんじゃないですか?」 「いやー、それは流石にちょっと。やっぱ、魚の味で客に来て欲しいんでね」 Bonito、通称かつお。 国内屈指の実力を持つスピナーでありながら、こうして街で魚屋を営んでいる。 魚屋という職を随分好いており、彼の店はネームバリューを抜きにしても繁盛してる。 いつものように、笑顔と元気な声を振りまく彼。しかし、今日の彼の元には、普段とは違う珍客があった。 「?」 初めは、違和感だった。 道を通り過ぎていく無数の人間の流れの中、1人の人物に違和感を感じた。 目の色、髪の色、鼻の高さ。ちらりと見えた顔のそれは、国内の人間とは違っていた。 外国人か。珍しい。 そして、その人物が自分の方にどんどん近づくにつれ、 自分が感じた違和感が「外人である事」だけではないと知った。 「らっしゃーい!」 その者が、店の中に入ってきた。そして、その瞬間に、空気が凍った。 魔力が右手から滲み出ている。 その魔力は、覚えがある。 今年のWorldCup。各国が技術を競い合った祭典。 見には行けなかったが、先輩がその模様を記録して投影してくれた。 その中で見たひとりのスピナー。FPSBの大エース、s777だ。 なんでこんな大物がうちにいるのか。はっきり言って分からない。 ただ、ばらまいている殺気からして、穏やかな話ではなさそうだ。 「・・・、何をお探しっすか?」 s777は、不敵な笑みを浮かべて、何か外国語でしゃべった。 「すいませんが、うちは外国語厳禁なんすよ」 一拍おくと、たどたどしい発音で、彼は言った。 「カツオを、サバキに」 右手でペンが動くのと同時に、店内を疾風が奔った。 パスコンボで体を襲う刃をかろうじて防ぐ。 「(こんなとこで闘ったら、被害が・・・)」 舌打ちをひとつして、裏口を吹き飛ばすと、そのまま裏通りに駆け出した。 西に走る。もう少し行けば、広場に出る。人があまりいなければいいのだが。 後ろから追ってくるs777。両側の建物を意にも介さず、攻撃をガンガン撃ってくる。 「逃げ切れるか?」 そう呟いたとき、後ろの足音が止まった。 振り返ると、s777は足を止めて右手に意識を集中させている。 次の瞬間、 「っ!」 火球。あまり大きくはないが、力の密度が濃い。 すぐさま応戦。高速でコンボを連続して繰り出す。 間に合うか―? その時。火球を止めるものがあった。 地から出でた緑の太い蔓。それらが幾重にも重なっていく。 火球と衝突。激しい魔力と魔力のぶつかり合いの後、火球の禍々しい気配は消えた。 これは、 「半端ねー大物釣った。昨日から殺気を追ってた甲斐が 左の頭上から声。そして、すとんと下に着地する者。 「NIKoo」 「面白そうじゃん。俺も混ぜろよ」 |
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ふたつの火花が散り始めた頃。 王宮を訪れる、二つの影。 「ここに来るのも、随分久しぶりね」 「そうですね。姫、歓迎されるんじゃないですか?」 「ふん。歓迎なんてされたくもないわね。今日は特に」 「まあ、そうでしょう。姫、あまり喧嘩腰にならないで下さいよ? あくまで最初は交渉という形になるのですから」 「形だけね。わざわざ私が来るまでもない気もするけど」 「そう言わないで下さい。しっかりトップ同士が話をすることで、筋が通ります」 「ふん・・・まあいいわ。さっさと終わらせましょう。 宣戦布告なんて」 |
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