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「ということでして」 「…また、面倒なことになってるのね」 「そういうことです」 王宮、応接間。 向かい合って座っているのは、SEVENと、協会の会長・ayshである。 「ですので・・・あの人らについて何か情報をお願いしたいんですが」 ayshが来たのは、SEVENの呼び出しを受けてである。 その目的は、ザコテ達についてもう一度話を聞くためである。 「情報、といわれても難しいわね。 あの子らの選定の中心になったのはayatoriで、私はあまりタッチしてないわ」 「選定?」 SEVENが少し意外そうな顔をして言う。 「ええ、そうよ。まぁ詳しいところはayatoriに聞かないと分からないけど…。 ayatoriぐらいになると、普段から弟子入りを志願するような人も少なくないはずだし、 知り合いを辿れば志願者はかなり見つかるでしょうね。 そういう人の中から、良い人材を選定したはず。 あれだけの人数だから…結構、時間かけてたと思ったわ」 「…」 ayshの言葉に対し、SEVENが少し沈黙する。 「どうかしたかしら?」 「いえ…すいません、勝手に彼らは無差別的に選ばれた、と思っていたもので」 「ayatoriの考え方からして、それはないわね。 だから、根から悪いような人は混ざってないはずよ」 「成程…ですが、事実問題を起こしている人が多いですよ、彼らは。 Saizenさん辺りが関わって、悪い人間を紛れさせた、という可能性は?」 「無いと思うわ。ayatoriが責任を持ってやる、みたいなことを言っていたから。 それに、多少問題が起きるくらいなら、まだ十分『良い人』レベルよ」 「と、言いますと?」 「普通の人が持ってない、こんな凄まじい力を手に入れた訳だから。 多少威張り散らしたり見せびらかしたりするのは、全くおかしい話じゃないと思うわよ」 「…そうでしょうか。普通に良識がある人なら、町中で騒いだりしないでしょう」 「人を殺すのにも苦労しないような力を持っておきながら、その程度なのは、むしろかわいい方よ」 ayshの言葉に、SEVENは黙り込む。 「元々スピナーって人がいい人ばかりだから、そう思えるのも無理はないけれど。 現状スピナーに悪人はほとんどいない、というのが私の見解よ。 その問題を起こした子達も、注意深く観察してあげて欲しいわ。 普通のスピナーに比べれば、時間がかけれなかった分人格の見極めは甘いかもしれないけど、 ayatoriの目を考えれば…そんなに悪い子は少ないはずよ」 「そうですね…考慮に入れておきます。 coco_Aさんの話じゃ、あからさまなチンピラっぽい感じでしたけど…本性は分かりませんね。 それにしても」 そこまで言って、SEVENが真面目な表情を少し崩した。 「ayatoriさんのこと、思ったより信用してるんですね。少し意外です」 「そうね…ayatoriに関しては、とりあえずもう何も気にしてないわよ。 思ったより真面目過ぎる、ってのは分かったけれどね」 そう言ってayshは微笑む。 「さて・・・申し訳ないけど、もう行かないと。予定があって」 「ああ、はい。そうでしたね。 忙しい中、ありがとうございます」 「こっちこそ、時間取れなくてごめんなさいね。 それじゃ、がんばってね」 ayshは立ち上がると、軽く手を振って、部屋から出て行った。 ayshが出て行ったあと、SEVENはひとつ息をついたあと、肘をついて考え事を始めた。 |
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「そういや、最近がおさんが帰ってきてるらしいわよ」 「…ん、マジ?」 raimo・Makinの研究室。 食事をしながら、RiAsONとraimoが話をしている。 「うん、NIKooが言ってた」 「ふーん…俺、直に会ったことないや」 「あたしもよ。 あ、Makinー、これおいしい。もうちょっとちょうだい」 RiAsONがMakinを呼びつける。 Makinはすぐにかけてきて、RiAsONの皿を受け取るとキッチンに戻っていく。 「…ところで姉御、最近飯食いに来すぎじゃね?」 「ん、Makinが食べに来てーって言うから」 「嘘つけ…。自分で作りたくないだけだろ」 「お、言うね。でも残念ながら違うわよー。ね、Makin」 RiAsONはスープをよそってきたMakinから皿を受け取りなが言う。 「…リアさんは結構料理やってると思うよ。上手だから」 「マジで?」 Makinがうなずく。 「キッチンに鼠湧いてそうなイメージ…、 いや、むしろ家にキッチンとか無さそうなイメージだったんだが・・・って痛っ!」 raimoが悲鳴を上げて、自分の足の方を見る。 「どうしたの、raimo?」 涼しい顔でRiAsONが言う。 「…相変わらず器用に、怪我させない程度にやりやがる…あー痛ぇ」 Makinは少し困ったように微笑んでいる。 「でも、がおさんが帰ってるなら、他にも誰か帰ってきてそうなものよねー」 「ああ、確かにそうだな…。でも、俺はそういう話聞いてないぜ」 「そっか…まぁいいか。 ところで、raimoは行く予定は?」 「…今んとこ未定だ」 「Makinは?」 Makinが首を横に振る。 「私もまだ大丈夫だなー…。 あー、そういえば、あの子そろそろ聞いたかな・・・」 「…ん?」 「ねーさ、raimoはきゅーちゃんに旅に関すること聞かれたり話したりした?」 「あ?いや、一言も話してねえぞ、そんな話」 「んー、そっか…じゃーまだきゅーちゃん知らないのかな・・・」 Makinが軽く首をかしげて、不思議そうな顔をしている。 「あー…あいつ、旅のことも知らねえの?」 「うん。登録する理由の1つに、それが知りたいから、っていうのがあったみたい」 「姉御が教えてやれよ。姉御が推薦人になってるんだろ?」 「んー…推薦人だけど、師匠って訳では無いからさ。 どうしたらいいか、ちょっと迷ってるんだよね」 「つったって、あいつが回し教わったのって、匿名だろ? 匿名相手に教えてもらうってのは無茶があると思うんだが」 「そうなんだよね。やっぱり、あたしが教えた方がいいのかな。 …にしても、raimoに聞いてないとなると、目的忘れてるかもしれないわね」 「多分そうだな」 「やっぱそうかな。 この前のCV以来見てないけど、何してるんだろー…」 日はだいぶ傾いてきたが、それでもまだ十分日差しは強く、暖かい。 その外の明るさと、中の暗さのコントラストが、中のダークな雰囲気をより一層強めている。 「…いきなりビンゴか」 思わず、EiH1はそう呟いた。 |
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したらばの中を注意してうろついてみようと思って以来。 何度かパトロールまがいのことをしてみた訳だが、早くもそれらしい現場を押さえた、かもしれない。 きっかけは、中で見つけた1人の匿名。 そいつから、なんとなく…前回見かけたような雰囲気がしたのだ。 距離を取ってこっそり追いかけてみたところ、したらばの奥の方へどんどん向かっていった。 そして、入ったのが、この建物。 表札には「あ」とだけ書かれている。 したらばにたくさんある、使われていない建物の1つである。 そんなところ、普通は用がないから、何かあるのは間違いないだろう。 窓から中を覗き込むと、数人の男の姿が見えた。 建物は、一応バーのような作りになっているらしいが、人はほとんど訪れていないらしいことが分かる。 テーブルやカウンターには埃がたまり、そこらじゅうに蜘蛛の巣がはっている。 中にいる数人の男たちは、椅子に座って1つのテーブルを囲んでいる。 足がテーブルの上にあったり、煙草の煙が数本あったりして、雰囲気はかなり暗い。 さて。 どうしようか。 何か話しているようだが、聞こえない。 普通はここで魔法で盗聴を試みるところだが・・・ここは、それができない。 したらばをはじめとする匿名の地では、気軽にペンを回すことはできないのである。 こっそりと魔法を使うことが可能となると、 特定をはじめとして様々なことが可能となってしまう。 そのため、魔力の発動を察知するような仕掛けがされているのである。 魔法が使われたら、周りの人間がすぐにそれが「分かる」。 具体的に言うと、魔力の生成を察知して、周りの人間に信号が送られるようになっている。 しかし、この条件も相手は同じ。 すなわち、周りの動きを察知するような魔力は使われていない。 それを考えると、話を聞くというのも、不可能でないかもしれない。 なんとか出来ないかな。 とりあえず、ここではいくら耳を澄ましていても聞こえる気配は全くない。 「…裏回ってみるか」 とりあえず、中の奴らは、この窓から見て反対側、かなり奥の方に見える。 反対側に回ると、もしかしたら話が聞こえるかも。 バレるのが少し怖いが、相手は魔力が使えないのだから、逃げることは可能。 ダッシュして人がいる方に走り去ってしまえば、大丈夫。 最悪、何でもいいから魔法使っちゃえば人が集まるから、ボコボコにされるのは回避できるし。 よし。 頭の中でリスクと対処法を確認した後、反対側へと移動する。 さっきは通りに面していたが、こっち側は2mほど間を置いて別な建物の壁があるだけだ。 窓が2つ。 片方がひび割れていて、それを利用して上手く隙間から覗くような形に出来る。 こっちからは日はさしていないし、さっきより中を覗くのには随分好都合だ。 さっきより、はっきりと顔が見える。 一番左に居るのが、俺が追いかけてきた匿名だな。 しかしまぁ、どいつもマナーが悪いな。 これだと、何と言うか、あからさまに悪ガキって雰囲気が漂ってる。 「…?」 そう思って見ていると、1人、少し雰囲気が異なる奴がいた。 座り方とかが他の奴とは少し異なる。 なんというか、1人だけ、動きに品を感じた。 気になって、よく目を凝らす。 「…あ」 そして、気づく。 あいつだ。 顔は変わってるけど、多分そうだ。 先日のザコテの事件の時。 何やら周りに指示を出していた、主犯格だ。 こうなってくると、どうも本当に当たり、らしい。 これは…意地でも、話を聞かないと。 必死に目を凝らす。 そこで、おもむろに主犯格の男がペンを取り出した。 まったく見覚えのないペン。かなりマイナーな物だと思う。 そのペンをどうするのか、と見守っていると。 回し始めた。 「…っ!?」 したらばで、魔法を使ったら…。 …あれ? 何も起きない。 魔法を使ったら、即刻、俺に分かるはずなのに。 どういうことだ? 一瞬混乱する俺。 その目の前で、ガラスがはじけ飛んだ。 「…っ」 小さな爆発で、ガラスの破片もそうは飛び散らなかった。 が、俺の頬はズキリと痛みを訴えてきた。破片で切れた様子である。 何より、今のは、確実に魔法だ。 なのに、俺にそれらしい反応は感じられなかった。 人が集まってくる気配もない。 「まったく、さっきから何を考えてるのか分からんが・・・バレバレだぞ、鼠」 そんな俺を見下しながら、男が言った。 「…どうして」 「フン…このしたらばの、魔力の防止装置など今や古いシロモノだ。 時間をかけてやれば、指定した範囲だけ解除することぐらいできる」 「じゃあ」 「当然、覗こうという輩に対する対策は打ってある。 お前がさっきからコソコソと何かしてるのは、筒抜けだ」 …ちっ。 したらばの装置を過信した俺のミス、ってことになるだろう。 「いろいろ聞きたいこともある。 が、その前に…まず、顔を晒してもらおうか」 「誰が、晒すかよ…」 「最悪、ペンを力づくで奪っても構わんのだが」 したらばの装置はそう簡単に外せるものじゃない。 こいつは、たぶん出来る。 それ以外にも、3人のスピナーが中にいる。 俺は無言で、顔に書けた魔力を外した。 「…これはこれは。EiH1君か」 「よくご存知で」 「まぁ、中に入りたまえ。色々と話を聞かせてもらおう」 こんな所じゃ、前みたいに、助けはまったく期待できない。 これは、本気でまずいことになったな。 |
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