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「了解」

coco_Aからの連絡に、口早に返事をすると、
kUzuは素早くしたらばを囲う塀を駆けあがった。

塀の上でしたらばを見下ろしながら、kUzuのペンが加速する。

ガンマン、パス、アラウンド。
様々な系統を複雑に絡み合わせながら、紡がれる旋転。
明快な豪快さと、秘められた緻密さが融合している。

ずっと待機させられた鬱憤を晴らすように、いきなり本気での旋転を繰り出す。

同時に、kUzuの周りに雷が、うねりを上げ始める。
kUzuの繰り出す魔力をどんどんため込んで、密度は上がっていく。

「kUzuさん、匿名の中には善良な人も混ざってますからねー。
 無差別に攻撃しちゃ駄目ですよ」

その横にtoroが降り立ち、のんびりとした口調で言う。

「分かってるよ。
 脅しの意味も込めて、多めに「貯めて」みただけだ。
 相手の反応で、敵か味方か判断する」

「まぁ、kUzuさんなら大丈夫とは思いますけどー。
 さーてと…」

toroもペンを構える。
表面には出さないが、その闘志は静かに燃えている。

「人数の利を生かした連携で攻めてくるから、注意、って話だったよね」

巨大な鋏を左手で軽々と持って上がってきた、scissor'sが言う。

「んー、複数のスピナーの連携って言ってもたかが知れてると思うんですけどねー」

「でも、わざわざSEVEN君が言ってたんだから、注意しないと」

「勿論注意はしますが、自信を持っていけば、負けはしませんよ」

kUzuが力強く言い切る。

「行こう」

3人が、したらばへと降り立つ。






「了解」

coco_Aからの連絡に、口早に返事をすると、
kUzuは素早くしたらばを囲う塀を駆けあがった。

塀の上でしたらばを見下ろしながら、kUzuのペンが加速する。

ガンマン、パス、アラウンド。
様々な系統を複雑に絡み合わせながら、紡がれる旋転。
明快な豪快さと、秘められた緻密さが融合している。

ずっと待機させられた鬱憤を晴らすように、いきなり本気での旋転を繰り出す。

同時に、kUzuの周りに雷が、うねりを上げ始める。
kUzuの繰り出す魔力をどんどんため込んで、密度は上がっていく。

「kUzuさん、匿名の中には善良な人も混ざってますからねー。
 無差別に攻撃しちゃ駄目ですよ」

その横にtoroが降り立ち、のんびりとした口調で言う。

「分かってるよ。
 脅しの意味も込めて、多めに「貯めて」みただけだ。
 相手の反応で、敵か味方か判断する」

「まぁ、kUzuさんなら大丈夫とは思いますけどー。
 さーてと…」

toroもペンを構える。
表面には出さないが、その闘志は静かに燃えている。

「人数の利を生かした連携で攻めてくるから、注意、って話だったよね」

巨大な鋏を左手で軽々と持って上がってきた、scissor'sが言う。

「んー、複数のスピナーの連携って言ってもたかが知れてると思うんですけどねー」

「でも、わざわざSEVEN君が言ってたんだから、注意しないと」

「勿論注意はしますが、自信を持っていけば、負けはしませんよ」

kUzuが力強く言い切る。

「行こう」

3人が、したらばへと降り立つ。






「後ろだっ」

1人のザコテが叫ぶ。

目の前の1人の少年に集中砲火を向けていたザコテ達は、虚をつかれる。

「くそっ…挟み撃ちにしようってか…」

振り向いたザコテ達の視界に入るのは。
攻撃を向けていた相手と、同じ顔である。

「裏影…っ」

ザコテ達の攻撃対象は、JEBの若き総合管理人、SEVENであった。

街の中心部、屋外の道路上。

SEVENは、10人近いザコテ達を戦闘を繰り広げていた。

自身と裏影での挟み撃ち。
それぞれの実力は半分になるが、注意力を削ぐ意味で、かなり有効である。

「…本体を消せば、どっちも消えるぞ!」

ザコテの1人が叫んだ。
疲弊してきたザコテ達は、これで決めんとばかりに攻撃をSEVEN本体に集中させる。

「残念」

瞬間。SEVEN本体が、消えた。

「…な」

ザコテ達の動きが、一瞬止まる。
そんな彼らの背後で、強力な魔力が立ち上る。


SEVENが、高速で移動した訳ではない。
ただ、裏影を解除しただけである。

「そっちが、本体っ…」

SEVENの攻撃が、ザコテ達に振りかかる。


1手遅れをとったザコテ達は、防御を試みるが、追いつかない。

SEVENは高速で詰め将棋を完了させ、全員を無力化させた。

「…ふぅ」

SEVENは息をつくと、顔を一旦変えて、人気のない所へと走る。

…少し飛ばし過ぎた。休憩を入れた方がいいな。

「10人程度に苦労するんじゃ、僕もまだまだだな…」

彼らは、したらばを潰すために何かしらの対策をしてきたようである。
その成果は認めるが、今の10人ぐらい、楽にさばけないといけない。

「SEVEN」

突然、背後から声をかけられて、驚く。

「…coco_Aさん」

SEVENが振り向いた先にいたのは、coco_Aであった。

「情報関係は大臣にお任せしました。
 大臣1人じゃつらいかもしれませんが…ま、頑張ってもらいます」

「…そうですか」

SEVENは、苦笑いしながら答える。

「私も、戦闘に参加するつもりです。
 …SEVEN、突然攻撃を許可したのは、どうしてですか?」

「…そうですね…。
 ちょっと、冷静になっただけです」

「EiH1さんと、何があったんです?」

SEVENは頬をかいた後、答える。

「何を話した、という訳ではないんですけど。
 ただ、彼が主犯―Uszakuと話しているところを、後ろから見てまして」

「話、ですか…彼、何をしたんですか?」

「何も。
 ただ、ちょっと話をしていただけですよ」

「ふむ…」

coco_Aは少し考えた後。

「EiH1さんの考えに、触発されました?」

「ちょっと違います。
 ただ、僕の個人的な感情で、ものを決めてたかもしれない、とは気づかされましたよ。
 …僕は、ここが嫌いなので」

「…」

「僕の考えはまだ保留です。
 ここの処遇も、今までのような放置でいいのか、考える余地があります。
 その辺は…ここを止めてから、ゆっくりと話しましょう」

SEVENはそう言うと、再び戦闘が起きている方へ走って行った。

coco_Aは、その姿に、黙って従った。






「…ちっ」

kUzuは、舌打ちを1つした。

kUzuが立っている周りに、人影はない。
皆、距離をとったり隠れたりして、即座に戦闘になる場所には誰もいない。


kUzuが戦闘に参加して以降。
最初は歯向かってくる匿名を相手していればよかったが、
ある程度倒したところで、相手がいなくなった。

ここ20分は、ほとんど戦闘をしていない。

住人なのかザコテなのか、判断が出来ない俺には、そう簡単に自分から攻める訳にもいかない。

…地道に、よく観察して、場合によっては攻撃していくしかないのか。

けど、そんなんじゃ埒があかないよな…。

そんな、考え事をしていた俺が、油断しているように見えたのだろうか。
後ろから、2人程のザコテが攻めてくるのを感じた。

振り向く必要もないな、と思いつつ、雷を飛ばす。

うねる竜のような雷が、ザコテ達の方へ飛んでいく。

規模は小さいが、とんでもなく高い密度の魔力を練りこんでいく。
彼らのレベルだと、防御は出来ない。
逃げようとしても、リアルタイムで動きを制御しているから、逃げれはしない。
雷に触れてしまって、簡単に気絶して、終いだ。

「…」

だが、手ごたえはない。
後ろを振り向く。

振り向きもせず、いきなり攻撃を飛ばしたから、2人は虚をつかれたはず。
実際、そんな表情である。

しかし、俺の攻撃は、数多くの横槍によって、防御されてしまっていた。

「…クソ」

せっかく見つけたターゲットを、逃すわけにはいかない。

2人組に向かって、雷の矢を数本飛ばす。
四方から飛んでくる防御に邪魔されるが、構わず攻撃を続ける。

移動術で距離を詰め、さらに追撃。

「…ちっ」

1人のペンは弾き飛ばしたが、もう1人は逃げられてしまった。

さっき、邪魔をしてきた奴らの場所は、なんとなく掴んだ。
だが、即座に相手も移動してくるだろうし、さっきみたいに周りに邪魔される内に逃げられたら…。


ウマコテの介入によって、破壊行為は大分落ち着いた。
…逆に、破壊行為をしてる奴がいたら、すぐに攻撃してやれるわけなんだけど。

「…参ったな、畜生」

「外も落ち着いてきたな」

「はい」

戦闘がこう着状態になり、動きが少なくなってきたころ。

本スレ内のUszakuは、走りながら側近に小さく呟いた。

「…指示をするが、今は俺のマークが厳しいから、口頭で伝える。
 お前から全員に伝えてくれ」

「了解です」

「各所に散っている人員を、一旦溜まり場に集中させる。
 ウマコテを1人1人、集中して叩け」

「分かりました」

「相手が複数になったら、すぐに散って姿をくらませ。
 対象を違う奴に移して、同様の集中攻撃をしろ」

「はい」

「…よし」

指示を受けたザコテが去っていく。
Uszakuは、真剣なまなざしで、眼下のしたらばを見ていた。


ウマコテ達を、各個撃破することは、可能だ。

これまでは、したらばを破壊するという目的があったため、そこまで人員を集中させては来なかった。

我々が築いたネットワークによって、人を集めれば集めるほど、力は強く出来る。
人数に物を言わせれば、ウマコテを超える魔術が行えるのは、実験済みだ。

一点集中の攻撃。
これで…ケリはつく。






戦闘が、静まって来た。
不気味な静けさだ。

一気に戦闘に参加してきたウマコテ達が、どうすればいいのか分からなくなっている。
これが、相手の狙ってることだとしたら。
危険な状態、ってことになるだろう。


「させねえよ」

raimoは、そう呟いた。

したらばの中心にある、建物の屋根の上。
全体を見渡せるここで、raimoは目をつぶって、意識を集中させていた。

raimoが感じた違和感。

それは、他のスピナーも感じていたことだった。

ザコテ達の強さの秘密、すなわち「連携」。

訓練・準備といったもので済ましてしまっている者が多かったが、raimoはそうは思わなかった。


あんな連携、いくら感覚を磨いたって、出来るもんじゃない。
何か、裏がある。

互いの魔力を感じて、それに合わせる―なんてのは、そう簡単じゃない。
攻撃のタイミング、種類、位置―そう言ったものを知らせる、何かしらのサインが必要だ。

一体どんなサインか。

…魔力を使ってる以外、ありえねえだろ。

恐らく、通信に使われている魔力を応用したようなものだろう。

Uszakuの言葉にも、引っかかる点があった。

『受けて立とう、我々が築きあげたネットワークでな』

ネットワークにザコテなんとかという名前をつけていた気がするが、それはどうでもいいとして、だ。
重要なのは、ネットワーク、という言葉だ。

普通はあまり使わないい言い回しだ。
だが、これを、例の「サイン」と繋げて考えればどうか。

すなわち、互いの感覚を、魔力によって共有するネットワーク。
それによって、あの連携が生まれているのだとすれば、合点がいく。


そうと分かれば、話は早い。
そのネットワークを、遮断してやればいい。

様々な探知をしかけて、ようやく今のしたらばの中での、魔力の流れをつかめてきた。

そろそろ、見えてきてもいいころだ…。




raimoのペンが、静かに動いていく。

独特の動きであり、その旋転は、違和感を感じるほどに滑らかで、よどみがない。
見る人を、自然と引き込むような、そんな旋転。

独創性と、人々に訴える感覚。
普通の構成でも、彼が回せば、「raimoの旋転」としてしまうような、個性と実力。


かつて、JEBには、圧倒的な魔力への感性と、旋転の力を持った魔術師がいた。
その魔術師を超えるものは、未だ現れていない。

だが、近い存在は、いくつか現れ始めている。

そんな中の1人が、raimo。
魔術師bonkuraに匹敵する魔力に対する感性を持ち、時に彼に近いレベルの力も見せる。


そんな彼だからこそ。

したらばという複雑な環境の中で、緻密に隠ぺいされたその波長を、捕えた。






「…え?」

EiH1は、思わずそう呟いた。


張りつめた空気の中で、ザコテ達とけん制し合っていたところ。
一瞬で、明らかに空気が変わった。


最初は、何が起こったのか分からなかった。
ただ、何かが起きたのは、確かだった。

なぜなら、自分と相対するザコテ達の表情も、一瞬にして変わったからだ。

「お、おい」

「どうなって…」

ザコテ達が、ざわつきはじめる。

これは、一体?

「チャンスね」

そんな呟きが聞こえるのと同時に、リアさんが動いたのが分かった。

鋭い火の矢が、ザコテ達を襲う。

「う、うおっ」

ザコテ達は、困惑しながらも防御する。
しかし、何だか弱い。

今までとは一転、統率のとれていない動きになっている。

なんというか、以前、coco_Aさん・kUzuさん・toroさんの3人で、集まりを攻撃したときを思い出した。

あの時のような、ただのザコテ達に戻った、って感じだ。

「ふぅ」

一呼吸を置いて、すぐ隣に来たリアさんが、言う。

「raimoかな」

「…raimo?」

「よく分からないけど、うまいとこやってくれた、って感じでしょ」

「はぁ…」

状況がつかめない俺に、極めつけのことが起こった。


本スレ内の匿名達の、半数ほどに、異変。

具体的に言えば、顔に。


「…うわ」

思わず、そんな声が漏れた。
これは…。


3分の2ほどの匿名の額に、黒い文字が浮かんでいる。
「ザコテ」と。

「うん、raimoにしてはいいギャグセンスしてるかな」

戦闘の中で、それはあまりにシュールで、笑えないほど効果的な目印だった。

「よっし、これで気兼ねなくいけるね」

リアさんがニヤッとすると、素早く動き出した。

「Makin、2人でここは片付けちゃおうか」

リアさんの問いかけに、Makinさんが頷く。

…あー、つまり、俺は邪魔しないように見てろってことか。



リアさんのペンが踊りはじめる。

奇抜な動き・大味な動きと、滑らかで純粋な旋転。

その両方を使いこなすリアさんは、戦闘において隙がない。
防御も攻撃もそつなくこなし、安定している。

格下相手には、厳しいだろう。
何か弱点があれば、そこをつけるのかもしれないけど、そうはいかない。

Makinさんも、リアさんに似て弱点が少なめなタイプだ。
リアさんと違って特徴的なのは、その華やかさ。
力強い大技も、滑らかな動きも、同じ技を他のスピナーがこなしたときより、明らかに質が高い。
当然、生まれる魔力も並ではない。


Makinさんが、強烈な熱風を飛ばす。

傍から見る分にはただの風だが、それが何かに当たった瞬間、発火する。
防御は難しいだろう。攻撃の範囲が特定しづらく、威力も高い。

Makinさんの攻撃に四苦八苦しているザコテ達に向かって、リアさんが的確な斬撃を飛ばす。
範囲を引き絞り、ただ1点―彼らの持つ、ペンだけを破壊してく。

怪我をさせないように、という配慮だろうけど…とんでもない精度である。


混乱したザコテ達は、2人の敵ではない。

本スレ内は、もはや2人のショータイムと化していた。
今までの鬱憤を晴らすように、次々にザコテ達を倒していく。

…コメントが思いつかない。

俺は、本スレ内の勝負がつくまで、ただ、圧倒されていた。






「raimo、お前か」

「…kUzuさん」

中心部。

raimoの姿を見つけたkUzuが、声をかけた。

「どうして俺だと?」

「これだけのことが出来るのは、今はお前だけだろ。
 流石だよ」

「…あざす。
 でも、流石なのはkUzuさんですよ」

「ん?」

「さっきからそこらじゅうでザコテが気絶してますが、kUzuさんでしょ。
 強烈な電圧でビリっとやって、無力化ですか」

「ああ、そんなとこだ」

「…威力と器用さを併せ持ってるんだからなー、この人は…。
 じゃ、もう片付いたんですか?」

「大体な。
 俺のほかに、coco_Aさん、SEVEN、鋏さん…あと、リア姉にMakinも見かけたな。
 これだけいれば、そう時間はかからないさ」

「俺がちょっと休憩してる間に終わっちゃうとはね…。
 活躍の場を残してくれててもいいじゃないですか」

ぶすっとした表情で漏らすraimo。
kUzuが苦笑いをしながら、それに答える。

「何言ってやがる、どう考えても今日のMVPはraimoだよ」

「…」

kUzuの褒め言葉にも、raimoはあまり嬉しそうな表情は見せない。

「俺じゃないっすよ」

「とは言っても、お前以外に誰がいるんだよ」

「…」

raimoは、何を言うか迷うように口の辺りをむずむずさせたあと、

「本スレいきましょう。
 締めです」

と、言った。






「…ここまで、脆いとはな」

目の前のUszakuは、自嘲気味にそう言い放った。
その言葉は、随分と寂しく響いたように、EiH1は感じた。


本スレ内。
ザコテ達は一掃され、Uszakuも既にペンを失っている。

「残念だったわね」

リアさんが、言う。
戦闘に参加したコテ達全員がUszakuを囲み、少し距離を取ってその様子を住人達が見守っている。

「さて、俺はどうなるのかね?」

「罪状は余るほどあります。
 覚悟しておいて下さいね」

SEVENが、厳しい口調で言う。

coco_Aさんが、Uszakuにゆっくりと詰め寄る。

「あ、あのっ」

そんな様子を見て、思わず声を出していた。

「EiH1さん?」

「その、えーと…」

何が言いたいか分からないまま、口を開いてしまって、言葉に詰まってしまう。

「…きゅーちゃん、まさかこの期に及んで同情なんてしてないよね?」

「う…」

ズバリとリアさんにあてられ、さらに言葉に詰まる。

「えーと…あ」

そんな中、パッと閃いて、駆け足でしゃべっていく。

「その、目の前にいるその人は、まだ、匿名じゃないですか。まだ、公に顔をさらした訳じゃない。
 ここじゃ特定はご法度ですから、その、匿名がやった、ってことで…。
 具体的に誰かを処罰はしない、ってことに…」

「…ならねえよ」

raimoが言う。

「だよ、ね」

…はぁ、俺は何を言ってるんだろうか。

「90」

低い声が聞こえた。
Uszakuだ。

「貴様、どこまで俺をコケにする気だ?
 この期に及んで安い同情など、不愉快なだけだ」

「いや、そういうつもりじゃ…」

なんだか、俺はこの人と相性が悪いのだろうか。
やけに怒らせてるような…。

「…ほんとに、そういうつもりじゃないんです。
 その、この人も、ペン回し界のことを考えてやったことだし…。
 この人も、たぶん、ペン回しが凄い好きな人だと、思うんですよ」

「…」

「俺が、この人の正体を知ったのだって、この人がマイナーなペンを持ってたのが発端じゃないですか。
 あれについて337さんから色々聞きましたけど、あれ、本当にマイナーなんですよ。
 よほどマメに海外について情報を仕入れてないと、あれに目は止まらないし。
 目にとまったとしても、わざわざ人に作り方を聞いて作るなんて、そうできることじゃないです。
 …だから…その…」

「もういいですよ」

俺の言葉を遮ったのは、SEVENだった。

「…EiH1さんの言いたいことは分かりました。
 ですが、この人のしたことはすぐに広まるでしょうし、何も罰を与えない訳にはいきません」

どう考えても、筋が通っている話だ。
…確かに、下手に同情するのは失礼なのかもしれない。

「…ですが、情状酌量の余地があるのは認めます。
 詳しい所は、王宮に戻って決めますので」

そう言うと、coco_AさんとSEVENは、Uszakuを連れて、本スレの出入り口へと向かう。

「ああ…そうだ」

SEVENが、一歩外に出たところで、思い出したように後ろを向くと、

「今回、我々管理人は、ここに介入して、守るような形になりましたが…。
 ここの存在を肯定する訳ではありません。
 お忘れなく」

と、言い残した。

言っている内容は厳しかったが、口調はどこか柔らかったように思えた。

「…ま、SEVENにしては上出来か」

「そうかなー?もうちょっと素直になればいいのに」

「いや、あれが今は本音でしょう。
 SEVENも、決してここを好きになった訳ではないでしょうから」

kUzuさんとリアさんが何やら話している。

「さってと…色々、ここの後片付けは残ってそうだけど、住民に任せた方がいいわよね。
 Makinとこに行って、みんなで打ち上げでもしよっかー」

「おー、いーですね。さんせーっす」

リアさんの提案に、toroさんが言う。

「…あの、すいません、俺はちょっと遠慮していいですか?」

「あ?
 お前が来なくてどうすんだよ」

raimoが口を尖らせる。

「別に、俺がいなくても…」

「いや、今日はお前が必要だ」

「そうね、きゅーちゃんも来ないと盛り上がらないな」

「…すいません。
 でも、今日は、ちょっと…」

凄く魅力的なお誘いで、本当に申し訳ないんだけど。

今日は、どうしてもやりたいことがある。

「何よ、やりたいことって」

「その…」

言おうかどうか迷った。
目の前の人たちの誘いを断るような理由ではないと、自覚していたからだ。

でも、言うことにした。
自分の、正直な気持ちだからである。



「ここで、飲んでいきたいんで」











一週間後―。

「移転?」

王宮内、見晴らしのいい、階段の踊り場にて。

raimoは、思わずそう聞き返した。

「そんな話もあるらしいわよ。
 やっぱり損傷が激しくて、今までどおりには使えなくなったらしいわね。
 今の場所に残る、って人もいるみたいで、結局どうなるかは知らないけど」

RiAsONが、その質問に答える。

「ふーん…」

「りっちゃーん」

階段の下から、RiAsONを呼ぶ声。

「ん、はさみ」

scissor'sは、急ぎ足で階段を駆け上がってくる。

「どうしたの?」

「あの、90くんのこと、聞きました?」

「きゅーちゃんがどうかした?」

「その…昨日、登録を解除した、って聞いたんですけど」

「は?」

寝耳に水な話に、raimoが、思わず声を出す。

「…登録解除、ね。
 相変わらず、人に相談もないんだから」

RiAsONは苦笑いしながら答える。

「理由とかは聞いてる?」

「なんでも、活動を自粛するから、とからしいですけど」

「…はぁ」

RiAsONは、溜息をつくと、

「よし、らいも」

とraimoを促し、階段を降りて行った。










「んー…」

やっぱり雰囲気が違うな。
まぁ、俺がこの場所を用意した訳でもないし、文句は言えないけど。

90は、新しいしたらばを訪れていた。
人は思ったより多く、出来たばかりの割には上出来、って所か。

まだ移転組だと腹をくくったわけではないが、こっちにも顔を出して見ることにしよう。


昨日、王宮に行って、登録を解除してきた。

理由は、コテとしての活動はいったん止めることにしたからだ。
そのための、区切りという意味で、登録を解除した。

コテとしての活動をやめる理由は、まあ色々ある。

俺は結局、ただの匿名として居る方が気が楽だ、って思ったのもあるし。
そもそも、コテとしての活動なんてたいしてしていない。

有名な人と出来たつながりを切ってしまうのは、正直勿体ない気もしたけれど、
彼らとは、自分はやるべきことが違う気がした。

圧倒的な実力は、俺にはない。
ついでに言えば、たぶんセンスもないし、彼らに追いつけはしないと思う。
結局、事件に関しても、自分じゃ何もできなかったしなぁ。


そうやって正統にコテをやるよりは。
俺は、このしたらばをより良い場所へ、変えていきたい。

偉そうな説教をしても、顔を晒してここを批判しても、多分ここは変わらない。

俺に出来るのは、ただ、1人の「良い匿名」として、ここに居続けることだと思う。
自分が「良い匿名」なのか、なんてのは自信がないから、まず自分の身を見つめ直すことからかな。


ま、何はともあれ、以前と同じ気楽な立場になった。

のんびりと過ごしていくことにしよう。

「よし」

元のしたらばの方も見ておこう、と思い、出口に向かう。


「…ん?」

入口付近、使用中の番号が書きなぐってある掲示板。

そこに、封筒が張り付けてあった。

「…なんだこれ」

その封筒には、大きく「>>90」と書いてある。

警戒しながら、封筒を手に取る。

中に何か入っているようだ。
慎重に開封して、中身を確認する。

「…PMのカード?」

それは、PMのカードであった。

それも、「EiH1」のカードである。

「…」

カードは、1件の新着メッセージを知らせていた。

差出人は、raimo。

『俺と姉御で、coco_Aさんに頼んで登録解除の申込取り消しといたぜ。
 お前、意思が弱そうだから、すぐまた登録とか言い出しそうだからな。
 損はねーだろうから、籍は置いとけ。
 あと、たまに飯食いに来い、ってMakinが言ってた』

90は、何度か読み返したあと、

「…参ったな」

と、ぽつりと呟いた。


ゆっくりとしたらばを出たあと。
EiH1は、そっとカードを、懐にしまった。







あとがきへ
 

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