投下するスレ 07

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夜が明けて、日は高くなりつつある・・・はずである。
はず、という表現の理由は、相変わらず雨を降らせ続ける厚い雲が太陽を隠しているからだ。

王宮の中の執務室。昨日から泊り込んでいたcoco_Aの元を、計算が訪れていた。
互いの情報を交換し、その後色々考えを巡らせている。

「冬さんは?いもが連れてきてくれたか?」

「ええ。昨晩のうちに。命に別状はありません。出血は多かったようですが、傷自体は浅かったです」

「そうか。良かった」

「しかし・・・imuさんは行動と言動が一致していないって感じですね」

coco_Aが計算の話を思い返しながら述べる。

「そうだな。話の途中では、調子のいい事を言っているだけかとも思ったんだが・・・
俺の攻撃を受けたのも演技だったのか?
だとしたらまんまとはめられた、ということになるが」

「その可能性もありますが・・・やはりわざわざ傷を負うよりも味方の援護を待つほうが常識的では?」

「確かにそうだ」

計算はcoco_Aの話にうなずく。少し間をおいた後、

「となると、imuさんは協会の動きには賛同していないのか?」

思いついた唯一の可能性を述べる。

「そうなんですかね」

coco_Aは微妙な返答をする。可能性としてはありそうだが、色々疑問が生じてくる。

「しかし、なら協会に加担した行動をとっているのには何か理由があるはず」

「そうだな。coco_A、姫とenotさんにも、そういうそぶりはなかったか?」

「・・・、私は特に」

応接間でのやりとりを思い浮かべるが、特にそういうそぶりはなかったように感じる。
しかし、その後の会話を思い出し、

「いや、そういえばSEVENがそんな事を・・・なんでも姫がほっとしたようだった、とか」

「ほっとした?」

「はい。あっちの要求を拒否した時にです。
もしかして、姫もimuさんのような立場なのでしょうか?」

「しかし、姫は曖昧な立場でこんな事をするような人ではないはずだ。
imuさんにも言える事だが」

「そうなんですよね・・・」

やはりどうもしっくりこない。
また頭を悩ませる。

「色々考える余地がありそうですが・・・ここまでですかね」

これ以上は今は無駄だ、と感じたcoco_Aが話を切り上げる。

「そうだな・・・昨日会議を開いたって?」

「はい。とりあえず、我々は静観ですね。まだ大きな動きが見えないですし」

「そうだな。しかし、あっちの動きに一貫性がないな。
s777の話なんて、他から完全に浮いている。無関係という事は無いだろうが、 何故1人だけ海外のスピナーが?」

確かに。s777の件以外は、国内の話に留まっているように感じる。

「これから先、外国との話も出てくるなら厄介この上ないですね」

「ああ」

計算が同意する。

「とりあえずここまでか・・・俺はいもと今日も動き回ってみる」

「分かりました」

「あー、それとcoco_A。あんまり無理するなよ」

「・・・、大丈夫ですよ」

「・・・そうだな。じゃあ」

彼の性格上、無理をするなという方が失礼なのかもしれない、と計算は感じた







「どうも、はさみさん」

「・・・こんにちは」

前日に指定された西街の空き家を訪れたはさみを、Sunriseが出迎えた。

「お越しいただきありがとうございます。
では、早速中へ」

「あ、ここなんですか?」

どう見ても人がいそうな雰囲気では無いと思ったんだけど。

「地下です。きれいになってますから、ご心配なく」

Sunriseの導きに従い、中に入っていく。
階段を下ると、広い会議場のようなところがあった。

中には・・・

「やあ、はさみ。いらっしゃい」

予想以上のメンバーが揃っていた。

まず、挨拶をくれたのはenotさん。その横にはimuさん。水無もいる。
奥で無表情に座っているのは、姫さん。
ここまでは協会のメンバー。いることも予想できた。

意外だったのはoutsiderさんだ。この人も関わっているらしい。
そしてその横、向かって右側の壁に寄りかかっているのが・・・

「やあ」

ayatoriさん、だ。

「・・・こんにちは」

「さて、じゃあayatori、はさみに話を聞かせてやってくれ」

「分かりました。はさみ、じゃあ場所を移そうか」

ayatoriさんが奥の扉に向かう。2人きりで話ができるようだ。

扉の先は短い廊下。小さな部屋がいくつかあるようだ。
その一番手前の部屋に案内される。

「さて、じゃあ、何から話そうか」

机に向かい合って腰掛けた後、ayatoriが切り出した。

「どうして、こんなことになっているのか教えてください」

「単刀直入に来たね。
目的は、旋転の開放。僕も単刀直入に言うなら、こうなる」

「開放?」

はさみが聞き返す。ayatoriはうなずいて、

「一般市民への開放さ。誰でも平等に旋転が出来る時代、というのを僕達は望んでいる。
今のような限られた社会は、好ましくない。随分前から思っていたことなんだけどね」

「そんな・・・そんなことしたら、旋転を悪用する人が出るに決まってますよ」

「そうとは限らない。ここJEBの国民を、もっと信じた方が良い」

「それに、だとしても、今のJEBを潰すなんてやり方、正しいはずがありません」

「・・・、まだ話していないけど、今は千載一遇のチャンスなんだ。
世界を動かすなら、今しかない。多少強引でもね」

ayatoriが強い目をして言う。

「強引・・・やはり、戦うんですか?」

「ああ。勝算はある」

「戦いなんて、駄目です。いいはずがありませんよ」

はさみの声が少し大きくなった。
ayatoriはひとつため息をして、

「おいるさん、説得しきれてないじゃないか・・・
はさみ、君はまだ僕達に協力すると、決めかねているようだね」

「はい。ayatoriさん、目を覚まして下さい。こんなの、ayatoriさんじゃない・・・」

はさみが悲しそうな声で訴える。
ayatoriは、

「なるほど。僕に会いに来たのか。説得するために」

やれやれ、といった感じでayatoriがひとつ息を吐く。

「まあ、君がそう簡単に話しに乗るとは思えなかったからね。なるほど」

「ayatoriさん・・・」

「しかし、悪いけど僕は気持ちを曲げるつもりはない。
それに、ここまで来てしまったからには、はさみには協力してもらうよ。」

そう言って、ayatoriは腰を上げる。
はさみが何か言おうと口を開いた瞬間。ayatoriは右手のペンをはさみに向けた。

「強引にでも」

冷たく言って、ayatoriはドアを開けた。

「何をしてもらうか、伝えに来る。それまで静かに待ってて」

ayatoriは去っていった。

「・・・どうして・・・」

はさみは、ayatoriが自分を脅すような真似をするとは思っていなかった。
だから、逆に彼の決意を見せ付けられた気がした。

「何が、あったんだろう」

真っ白な壁を見つめながら、つぶやいた。


後ろ手で扉を閉めたayatoriに、imuが近づいてきた。

「傷、ですか」

「ん、昨日話さなかったか?計算君とやりあったときにね」

「ええ、聞きましたよ。計算が、なぜか手負いの敵を逃がしたとね」

なぜか、という部分に少しアクセントを置いてayatoriが言う。imuは何も答えない。

「まあ、いいですよ。予定通り進んでいますか?」

「・・・進んでいる、とSunriseが言っていたよ」

「そうですか。あまり、手荒い真似はさせないで下さいね」

笑みをimuに残し、ayatoriは会議場に戻っていった。







雨の日を選んで出かける、なんて物好きは俺はまだ聞いたことが無い。
だから、今日みたいに雨の降る日は、客が少ないのは事実なのだ。

「だが・・・」

と、Bonitoはつぶやく。

「いくらなんでも少なすぎだろう」

昨日、会議の後SEVENからayatoriなどについての話を少し聞いた。

特にやることは申し付けられなかったので、情報収集でもしようかと思い、
昨日のごたごたにも関わらずこうして店を開いている。

自分が街の人と会話するとなると、店に来た客との会話が一番自然であるからだ。

しかし、参ったな。これではその目的は果たせそうに無い。
昨日、店で少しs777とも戦闘しているし、そのせいだろうか・・・

「よう」

そのとき、店の外から声がかかった。
やっとお客さんが、と思ったが、残念ながら違うようだ。

「NIKoo、どうした」

「どうした、はこっちだぜ。今日は街の奴等、一体どうしたんだ」

「ああ、客の少なさか?」

何を言おうとしているのか察して答えたつもりだったのだが、NIKooはその発言に少し意外そうな顔をした。

「ん・・・お前もなのか。いや、俺もここまで来るのに、周りの視線がおかしかったんだよ」

NIKooに関しても街の人が意識しているらしい。

「やっぱ、昨日街で戦闘したのがまずかったんじゃないのか?」

「は?俺、街で戦闘なんてよくやってるぜ」

「・・・」

「馬鹿、ひったくりとかそういうのをこう、しばいてんだよ」

Bonitoはあまり信用していないような目をしている。

「・・・まあいい。じゃあ、今日は異常なのか?」

「ああ。俺を見て小声でなんか話したり、ビビッたり。おかしいぜ」

「そうか・・・」

目の前の通りを人が歩いていく。
自分の店に来る客は極端に少ないが、人通りは雨の日としては普通のように感じる。

「・・・、何か悪い噂でも流れているんだろうか」

「昨日の今日だからな。
ま、俺は別に嫌われようが関係ないが、おめーは大変だな。客商売」

「まったくだよ」

自分で言うのもなんだが、普段から店は繁盛しているし、町の人から信頼もされていると思う。
何があったのかは知らないが、こういう事態は正直ちょっとショックであった。







BonitoとNIKooが人々の態度に頭を悩ませていた頃。
王宮内、SEVENの自室を訪れる者があった。

「せーぶーんーーーーー!!!!」

「うおっ!?」

怒号と共にドアが蹴破られる。
コーヒーを淹れて休憩していたSEVENは、驚きに椅子から跳ね上がる。

「SEVENこのやろう・・・なにやってやがる!」

「あ、Pespさん・・・え、はい?なんですか?」

「お前が黒幕かどうなのか、はっきりしやがれ」

「ちょ、ちょっと待って、一体なんですか?」

「お前が・・・人民を苦しめていたのか・・・このPesp様、もう我慢の限界だスパァン!」

Pespさんがさらに何かまくしたてている時、後ろから来た人物が頭を思いっきりひっぱたいた。

「(今、自分で擬音を言った・・・)」

「アホ・・・何考えてんだよ、いきなり」

後から来た人物はkUzuさん。この前の調査以来、ずっと2人で行動しているようだった。

「お前が信じてどうする・・・ガセネタに決まってんだろ」

「え?そうなの?」

「いや、お前わかってやってるだろ」

「あ、じゃあさっきのおばさんぶっとばしてこようか?」

「いいって。あー、SEVEN。ちょいと真面目に良くない話を聞いた」

kUzuの表情が引き締まる。

「どうしたんです?」

「昨日の協会の話が、町中で噂になってる」

kUzuの言葉にSEVENは驚いた。

「本当ですか?」

「ああ。しかも、かなり悪い尾ひれがついて」

「尾ひれ?」

SEVENが聞き返す。kUzuはうなずいて、

「とりあえず広まっているのは、協会が何か抗議に行って、決裂したってこと。
そして、完全に管理人側が悪者って感じで噂になってる。変なガセネタもついて」

「なんか、管理人が権利を濫用してるとか、税金がどうのとか、
SEVENがくらさんをあくどい手を使って総合管理人から蹴落としたとか、
交渉の席でもcoco_Aが姫を吹っ飛ばしたとか、実は単なる姫とSEVENの痴話喧嘩じゃないかとか」

「最後のはなかったが、とにかくそういうのだ。はっきり言ってむちゃくちゃだぜ・・・」

「そんな・・・」

「俺達も街でなーんか変な目で見られてると思ったらさ。
しかし、たった一日とは思えないほどの話の広がりようだぜ」

kUzuが苦い顔をする。

「スピナーさんたちも悪い噂が?」

「少なくとも俺達は管理人達の手先、みたいな扱い。
王宮によく出入りしているような人たちは皆そうなんじゃねえかな」

「街のおばさんこええよ・・・街のおばさんたちの情報網は異常だよ・・・」

2人が証言する。SEVENは少し考えて、

「・・・coco_Aさんの所に行きましょう。それと、toroさん、Saizenさん、あと大臣にも声を」




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