投下するスレ 10

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JapEn1st。
3年前の聖夜は、JEBの夜明けとも言われる伝説の日となった。

神・HIDEAKIにより開かれた地は、多くのスピナーによる変遷、進化を経てJEBという国が成るに至った。
そのJEBの名を世界に轟かせた伝説のCV。それがJapEn1stである。

以降、JapEnは毎年1度の恒例となり、2nd・3rdが行われた。その2作も名作であったが、1stほどのインパクトはなかった。
それほどにJapEn1stは別格であった。当時最高のメンバーが、全力を出し切った、完璧な作。

その別格さ故、いやその別格さを生み出したからこそ。JapEn1stでの回し手11人も伝説となってているのである。


その11人の内、9人。
Sunriseとaysh以外は装置による偽者であるが、それでもJEBの面々を大きく震撼させるのに十分であった。

「coco_Aさん!」

SEVENの声にcoco_Aははっとする。

そうだ。圧倒されている暇はない。

『4人のスピナー、それにもう7つの魔力反応』

「各自、敵を迎撃お願いします。7つの反応は、JapEn1stメンバーの偽者だと考えてください」

337の声に続けてcoco_Aが支持を出す。

「やはりcoco_A君が司令塔のようだね」

それを見たayatoriが一瞬で距離を詰めた。

「頭を叩くのは、セオリーだね」

始動するペン。その右手を狙うように、足場から緑の槍が突き出た。
大きく後ろに飛び退くayatori。
そのayatoriとcoco_A、SEVENの間に派手な音を立てて、NIKooが着地した。

「NIKooさん?」

「ayatoriは俺にやらせろ」

NIKooが鋭い眼光を放っている。

「・・・任せます」

SEVENが言う。coco_AとSEVENは走り去る。


「337さん、応援を頼めそうなスピナーはいませんか?」

『・・・・・・無理。みんな国民をかばう形になってるし、戦力の振り分けが完璧すぎるね、うん』

「分かりました。大臣も戦闘に出てください」

「数的不利はちょっと大きいですね。なんとかしないと」

SEVENが言う。







SEVENの言うとおりだ。

現在、王宮内の戦闘可能なスピナー数は11対9。人数で劣っている。
JEB対協会なら、どう考えてもJEBにスピナーの量で分があったのだが、まさかこんな展開になるとは。
完全に予想外だ。
とりあえず、なんとか人数を五分にしなくてはならない。

『coco_A』

ペンダントから低い声が響く。

「冬さん?」

『俺も出る。よく知ってる相手だ、時間稼ぎくらいにはなる』

「・・・お願いします」

そういえば冬さんは、王宮内の一室で治療をしてもらっていた。
医療施設は王宮内にはないが、変に話が広まらないようにそういう形をとっていた。

まだ怪我は完治しているはずはない。しかし、断れる状況でもない。

「あと1人・・・」

「僕が2人相手します。それで人数は五分です」

SEVENがcoco_Aに言った。

「2人って、どうやって」

SEVENが掌を指差す。

「・・・、しかしそれではSEVENが」

「時間を稼ぎます。それまでに、誰か1人を倒して下さい」

そう言うと、SEVENはcoco_Aと別に進路をとった。







裏庭。kUzu、そしてPespが敵の襲来を待っていた。

「JapEn1stメンバーか・・・」

「テンションあがってきたあああああああ」

「馬鹿・・・まあ気持ちは分かるけどよ」

JapEn1stのメンバーといえば、kUzuやPespにとっても憧れの存在である。
それと、偽者とはいえお手合わせ願えるとは、正直に言えば嬉しいというのも分かる。

「ぼんさんと栗さんはいないらしいから、それは助かるな」

「ま、あの2人はさらに別格・・・うほっ」

Pespが悲鳴とも歓声ともつかぬ声を上げて飛び退く。
直後、派手な火柱がPespが一瞬前まで居た場所で上がる。

2人の前には、人の姿をしたものが、3つ並んでいた。

「惑星さんか、こりゃ嬉しいぜ、畜生」

DaReKa、bAKa、aaaa。
いつも共に行動し、お互いを競い合った彼等は、JEBに新しい風を吹かせた。
人呼んで、惑星組。世界に名だたる3人組。

「けど・・・」

2人に向かって、惑星組の1人―DaReKaが切り込んできた。
オーソドックスだが、キレのある旋転。風の刃が2人を狙う。

すぐさま左右に展開、DaReKaの攻撃を交わす。その2人を待っていたかのように、炎が襲う。

kUzuは軽くかわした、つもりだったが、攻撃は止まらない。
正確に死角から炎が突いて来る。

「っ」

やばい、とkUzuは焦る。
いきなりで少し気が緩んでいた。押し切られる―。

そう思ったところで、激しい爆風。aaaa・bAKaを狙ったPespの攻撃だ。
2人はなんなく抑えたようだが、kUzuへの攻撃は止んだ。

「悪い」

「ん」

「しかしありえねえ・・・aaaaさん強すぎだろ」

さっきの火炎はaaaaさんのものだ。まちがいない。
強力なアラウンド、パスによる難易度の高さ。それによる攻撃の威力は予想していたが、
あそこまで連続で、かつ精度の高い攻撃をしてくるとは思わなかった。

「いや。さっきのは愛の共同作業さ」

「は?」

「つまり、攻撃をaaaaさんがぶち込んで、細かい調整をbAKaさんがしている。
流石のコンビネーションって言うか」

なるほど。2人がかりの攻撃か。それなら納得できなくもないが・・・

「本当に偽者かよ、これ」

「YABEEEEEEEEね」

「しかも、2対3って」

2人の背後から、またもやDaReKaが切り込んでくる。
敵の体制を崩して、aaaaとbAKaが仕留める、というのがパターンのようだ。

「ちっ」

どうする。受けたらそれこそスキが出来て、炎に狙い打ちされる。

kUzuが回避しようと身構える。そこで、DaReKaと2人の間に割って入る者があった。

「SEVEN?」

kUzuが言う。だが、SEVENらしき人物は何も返事をしない。

「あ・・・、裏影?」

裏影、シメトリカルシャドウ。
JEBで自在に使いこなせるものは、SEVEN1人だと言われている。
掌での特殊な旋転であり、回し手に独特の効果をもたらす。
平たく言って、分身。自分の力の半分を持った影を生み出すことができる。

「いくら人数不足っても・・・SEVEN・・・」

自分の力をニ分割するに等しいこの技。本人の力は当然弱まっている。
SEVEN自身も今戦闘に入っているだろう、負けたら命に関わる。
それなのに、だ。

「kUzu」

「わーってるよ」

さっさとケリをつけて、SEVENの手助けに行かなければ。考えてる暇はない。

「影SEVEN、DaReKaさんの足止め頼むぜ」

PespとkUzuはaaaa、bAKaの方に駆け出した。







『たろさんだ。戦闘に入る』

337のペンダントから声が響く。Bonitoだ。
惑星組とはkUzu君とPesp君。それに、SEVEN君はろひくんと戦闘に入ったとさっき通信が入った。

「たろさんか・・・」

『ん?大臣、何かあるか?』

「あー、いや。なんでも」

ふう、と337はひとつため息をついた。
JapEn1stのメンバー、か。


古参新参、なんていう分け方はもう廃れてしまったし、元々意味も無かったのかもしれない。
しかし、あえてその言い方をするならば、337は古参である。

JapEn1stに、337はメインの「編集者」として参加している彼は、今回の敵に人一倍の感情を抱いていた。


今、JEBの中心からJapEn1stメンバーはすっかりいなくなってしまった。
皆引退、あるいは休止状態。姫はまだ活動していると言えるけれど、以前と比べれば活発とはいえない。
JEB内で業務をしているような者は、自分だけだ。

JapEn1stの準備をしていた頃の事は、つい昨日のように思い出せる。
あの頃は、毎日が楽しかった。日々広がっていく世界に、胸が躍ったものだ。

「ま・・・懐かしんでる暇もないかな・・・」

廊下を歩きながら、先程から近づいてきている気配を337は感じ取っていた。

「なにわーおか」

口に出してみるとなんだか違和感があった。それくらい長いこと呼んでいなかった、ということだ。

「・・・律儀に昔のペンなんだなぁ」

感じる魔力の気配は、彼が後に使ったコムッサ、KTによるものではなく、
彼独自の改造が施されているplaycolor2のものだった。

足音が聞こえた。337は立ち止まり、ペンを構える。

現れた長身の男。表情は見えない。
右手の長いペンと、左手の巨大な「棒」。

魔力により強化した全身と棒術による格闘戦。戦闘スタイルも予想通り、昔のまま。

「なにわーおと戦闘に入るよ」







『なにわーおと戦闘に入るよ』

「・・・、これで後は・・・」

337からの通信を受け、coco_Aは考えを巡らす。
まだ戦闘に入っていないのは、こっちが自分、toroさんにいも、冬さん。
相手は、姫とimuさんとindexさん、そしてSunriseさん。

基本的に1対1の形になりそうだ。相手がそういう動きをしている。
ならば、できるだけ相性の良い相手と戦わなくてはならない。

考えを巡らすcoco_Aに、toroの声がかかった。

『coco_Aさん、indexさんとやりたいです』

「indexさん?」

『はい。多分待ってりゃあっちからくるとも思うので。よろしくお願いします』

あっちから来る、か。何か考えがあるのだろう。

『なら・・・俺も希望がある。Sunriseとやらせてくれ』

「冬さん?」

『ちょいとあの馬鹿に、話がな・・・。こっちから仕掛ける』

「・・・では、2人ともそれで」

となると、後は自分といも。協会側は姫とimuさんだ。

「姫をお願いできますか、いもさん」

『はい、おっけーです』

よし。これでカードが決まった。
imuさんを自分で相手できるのは好都合だ。
計算さんとの一件を考えて、自分で相手をしながら探りを入れたいと思っていた。

「勝ちましょう」

短く言った。返事は無かったが、全員が頷いてくれたように感じた。







塔の上で、toroは敵が来るのを待っていた。

「来い・・・」

先日、この塔の上で戦闘をしたばかりだ。
あの時の無限に生まれる影。あれも、誰かの旋転を基にしたものだとしたら。

影使い。そう聞いて思いつくのは、JapEn1stメンバーのあの人だ。

あの時は魔力自体の精度が低く、誰のものなんて考えもしなかった。
もしそうだとしたら、多分、もう一度・・・

「びーんご」

きた。塔を這うようにして上ってくる魔力の波。
直接見たことはないけど、これはその影使い、indexさんのものだ。

旋転を開始する。
同時に、円状の塔の上、その円周全体に黒いものが現れる。

「本人は来ないのか。ま、いーや」

あの時と同じように、小手調べとガンマンで一角に仕掛ける。
しかし、今回は反応が違う。小さな火球は、軽く手を払うようにして防がれてしまった。

「なるほど、影もそーんなに弱いわけではないんだね」

数にして20前後か。
けど、ゆっくりしてる暇はない。

一斉に飛び掛ってくる相手。
複雑な動きの指、その指の間を渡っていくペン。相手の位置、動きが一瞬でtoroの頭に入り込む。
見切った相手の攻撃の隙間を縫って回避していく。

相手の第一波が終わったのを見計らい、切り替えしてガンマン・バクアラを複雑に組み込む。
大小さまざまな火球を、影の頭部に向けて的確に、かつ高速に打ち込む。

じっくりとした戦闘をするtoroとは思えない猛攻。

それには理由があった。

さっきのcoco_Aさんの通信で、組み合わせがはっきりした。

本物のスピナーを相手する4人、それに分身しているSEVEN君関係。
この辺は、それぞれの実力を考えても分が悪いと思う。
出来るだけ早く1人を倒して人数の優位に立ちたい現状、それが出来そうなのはそれ以外の3人となる。

しかし、神速を操るたろさん相手じゃBonitoさんでも長期戦になりそうだし、
337さんも戦闘が得意なタイプじゃない。

なら、僕が多少無茶してでもindexさんを早く倒さなければ、みんなが危ない。


火球の直撃を受けた影でも、まだ立っていた。
それぞれにかなりの魔力がつぎ込まれているようだ。
なら、こいつら全員を倒せば、おそらくそれで終わりだ。

JEBの命運が自分にかかっている感覚。
WorldCupの時と同じだ。

toroの心が燃える。
相手の反撃を待たずして、再び猛攻を仕掛けた。







「おいる・・・久しぶりだな」

「冬か」

王宮内部の広間。そこで、winterとSunriseは対峙した。

「imuさんが仕留め損ねたらしいな」

「ああ、仕留められ損ねたな」

2人が低い声で笑う。

「協会にも嫌われたもんだ」

「いや、お前なんかどうでも良かったんだ。 一般兵の戦闘テストだった。
管理人側が適当な理由を考えてくれそうだったから、お前が相手になっただけだ」

「まあ・・・そんなことだろうとは、思っていた」

「んで、お前はJEB側なのか」

Sunriseがペンを取り出しながら言う。

「そうだな・・・お前らみたいな馬鹿に付き合うつもりは・・・ないからな」

「そういうとは思っていたが、JEBの味方につくとは意外だったよ。
興味ない、とか言って関与しないと踏んでたんだが」

「俺も、姫やらimuさんには世話になったからな」

「?」

「おいる、お前姫がこんなこと本気で考えてると思ってるのか?」

「・・・、水無みたいな事を言い始める気か?」

Mizmの名に冬が反応する。

「・・・水無はどうした?」

「ん・・・。内部での作業にあたってると聞いてる」

「・・・。内部での作業、か」

winterが含みを持たせた言い方をする。

「冬、話はこの辺にしようか。さっさと潰させてもらう」

Sunriseの言葉に、winterもペンを構える。

「冬、俺に勝てると思ってるのか?」

「ふん」

2人の間に、静かに火花が散り始めていた。







「ようはさみ」

「っ・・・、あなたですか」

地下の協会本部、広い作業場。

座り込んでいたはさみに声をかけた人物を見て、
はさみは意外さをあらわにしたあとにぽつりと言った。

「悪くない出来だったな」

はさみは何も答えない。ただ唇をかみ締めている。

「・・・、あんなのに・・・」

「ん?」

「あんなのに、JEBの皆さんは・・・負けません」

はさみの言葉に、笑い声があがる。

「ははは、なるほどね。
俺としては、どっちかと言えば協会に勝って欲しいんだ、製作者にそんなことは言って欲しくないな」

「・・・、どっちかと言えば?」

はさみの疑問に対する答えはない。

「まさか・・・」

何かに気付いたような声をはさみが漏らした。







その頃、JEB東北のはずれ。
国内中でスピナーが戦闘をしている中で妙に静かなそこに、男が立っていた。

「やっと・・・見つけたぜ・・・」

小さな声で呟いた。




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