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森の中を駆ける、2つの影。key3と、兵卒。 「key3、嫌な予感とは一体なんだ?」 兵卒がそんな質問をぶつける。 「予感といっても、何か思うことがあるのだろう」 「そうですね、確かにあります。 単純に、俺がいない今は、一番狙い時だということです」 そう、key3は言い切った。 自分が今のJEBで一番の回し手だと暗に意味した発言。 しかし、それを驕りと捉えられる人物など、この世界に存在しない。 「確かにそうではあるな。少し迂闊だったかもしれんな」 「そらに、もしそうだとしたら、もう1つ心配があります」 「ん、もう1つ?」 兵卒が聞き返す。計算は答えて、 「私が居ないと相手が知って攻めているとなら、 こちらの勢力に内通者が居る事を意味しますから」 「内通者、か」 しばらく間をおいた後、兵卒が聞いた。 「計算、お前は内通者に心当たりがあるのか?」 「・・・、そうですね・・・あるといえば、あるのかもしれません」 「そうか」 曖昧な言い方をする計算に、兵卒はそれ以上聞くことはしなかった。 |
「imuさん」 coco_Aが、対峙した人物に言う。 王宮東の少し開けた場所。。 わずかにある植物以外は何もなく、ただ石畳が広がっている。 「あなたは私達の敵なんですか?」 じっと目を見据えながら、聞く。 「・・・、coco_A。僕達の計画の、邪魔をしないでくれるかな」 「しかし、計算さんと」 coco_Aの言葉をさえぎって、imuのペンが始動した。 「(やるしかないのか・・・)」 流石にストレートに聞き過ぎたかもしれない。 反省しつつ、じっと相手の動きを観察する。 imuさんのような独特のリズムでの旋転は、流れを掴むのが難しい。 「・・・っ」 突然視界が暗くなる。 「いつの間に・・・」 警戒していたはずでも、幻術がかけられるタイミングが分からなかった。 coco_Aの目には、ぼんやりとした風景しか入ってこない。 このままでは、戦闘にならない。 「・・・」 相手の魔力が「来る」点を探さなければ。 こういうのはあまり得意ではないが、戦闘中はそうも言っていられない。 ペンを始動。 バクアラで自分の周りに荒めの爆発を起こす。 その爆発の感覚が違う点―左後に向けて、ガンマン系コンボを放つ。 流れ込んでくる魔力を断つ。 「なるほどね、そういうやり方か」 imuがうなずきながらこちらを見ている。 「魔力を断つ、ね。確かに誰かに幻術をかけ続けるためには、魔力を送り続ける必要がある。 そこを突いた、key3とは違った攻略法だ」 「・・・」 「だが、それではキリがないね。僕は構わないけれどね」 「imuさん・・・」 「coco_A、もう一度言おう。僕や、姫の邪魔をしないでくれよ」 「そうは行きません」 「そうかな、僕はそうじゃないと思う」 「・・・?」 imuが再びペンを始動させた。 また、幻術がcoco_Aを襲う。 ゆがむ視界の中で、coco_Aは考えていた。 「(imuさんは一体・・・)」 今日の言動もどこかおかしい。やはり、何かある。 どうする。 imuさんは敵なのか、味方なのか。 もし味方なら、何かのサインだと思う。 理由があって直接は伝えられない、隠れた意味があるはずだ。 だが、もし本当に敵ならば・・・ 「・・・」 再び、coco_Aがimuの幻術を振り切った。 「分かりました。繰り返しましょう、何度でも」 そこで、いったん言葉を切る。そして、付け加えるように、 「・・・どちらかが、力尽きるまで」 「そうか」 imuの表情は冷静を保っている。 そのimuの後ろ、王宮中心の建物。 窓が凍りついたのが見えた。 「(姫はあそこか・・・)」 いも、頼んだぞ。そう心の中で呟き、coco_Aはimuの攻撃に備えた。 |
王宮内の階段・廊下を走る。 「うわぁっ」 背後から追ってくる氷の槌。 次から次へと生まれる氷に反撃する暇が無く、戦闘直後から逃げ回るだけになっている。 「・・・」 そして、この廊下はこのまま少し行くと行き止まりになってしまう。 多分相手もそれを分かってて、追ってきている。 なら・・・ 視線の先に壁が見えた。 その瞬間、いもの旋転が動きを変えた。 安定感抜群のスプレッド。 衝撃波が一直線、突き当たりの壁を吹き飛ばした。 「!」 後ろから追ってくる人物が、意表を突かれたような声を漏らす。 ここは4階、そこそこの高さはあるが、旋転を用いれば飛び下りれなくはない。 ぽっかりと空いた穴に向かっていもは疾走し―絶壁の直前で後ろを振り返り、衝撃派を放った。 行き止まりを強引に打開。そして、そこから飛び降りると見せかけて、反転して攻撃。 攻めに転じるためにわざわざ張った二重のフェイク。 それは、いもの敵に対する強い警戒心を表していた。 いもが見つめる先。意表をついたはずの攻撃は、氷壁によって防がれていた。 「やるわね」 透き通った氷の間から見える、美しいその姿。 氷の女王、姫ことayshである。 「うー」 今のでも防がれちゃうのか。ちょっと自信あったんだけどなあ。 まあでも、姫さんはバランスのとれたスキのない旋転で知られてるし、 出し抜いて一発入れるのは難しいタイプの人なのかもしんない。 「姫さん・・・」 いもの問いかけに姫は答えず、再び攻撃が放たれる。 今度はいももその場を動かず、氷を打ち砕いて対処する。 猛攻、と呼ぶに差し支えないが、いもが相手できないものではない。 姫も、近年の活動が活発というわけでもない。 戦闘も久しぶりなのかもしれない。本調子だったら、多分もっとキツイ戦闘になる。 ・・・本調子じゃないのに、さっきの攻撃は防がれちゃったのか。 やっぱりへこむなあ。 姫の攻撃は続く。 長距離走をしている人のように、一定の量・質での攻撃が続く。 「・・・」 スキを見て、姫への攻撃を放ってみる。 しかし、瞬時に氷がそれを阻む。 「むー」 やっぱり、こっちの攻撃は見切られている。 しかし、ならもっと強い攻撃が来ても良い気もしてきた。 何か、狙いがあるんだろうか。 「早くしなさいよ・・・」 そんな姫の呟きは、氷が砕ける音にかき消され、いもの耳には届かなかった。 |
あと6つ。 一気にいけるかな、うん。 塔の上。 toroは、相手を見据え、そしてひとつ気合を入れた。 ペンが加速する。自分の目で完全に追えてはいない。 ただ、指が覚えている。 爆雷。ペンが空中に放たれる。 着地までの数秒。見えない糸が、影の周りに無数現れる。 動きを止めれはしない。けれど、誘導は出来る。 ペンが下りてくる。 6つの影の頭部へ、照準が・・・定まった。 ペンが着地。 人差し指・親指の上で余韻を残して回り、そして再び手の周りで踊った。 強烈な火球が6つ。 溜めに溜めた魔力を孕んで、炸裂する。 少し間があって、影は次々と消えていった。 「よ・・・しっ」 toroの息は荒い。かなり飛ばして相手を倒した。 多分、もうindexさんに力は残っていない。残っていたとしても、たいした相手ではない。 止めを刺すより、他のスピナーの手助けに行く方が先だな。 塔の階段に向かおうと、後ろを向いた。 そして、そこにいる姿を見つけた。 「・・・indexさん」 indexさん本人がそこにいた。 身を呈してでもここからは逃がさない、という事だろうか。 「悪いですけど―」 どいてもらいますよ、と言おうとした。 だが、言えなかった。 indexの前に、再び影が現れる。 その影が、今までの物とは違うと、toroはひと目で理解した。 「馬鹿だなー・・・僕は・・・」 一体何故、気付かなかったのか。 indexさんは影の使い手。だが、彼は、シャドウしか使えないわけでもない。 安定感のあるコンバク・パス等、いくらでも他に売りもある。 さっきの影のみでの応酬は、余力を残した上での戦闘だった。 魔力の量はあったかもしれないが、旋転自体はいたって単純。 それを正面から相手するなんてね。本当に馬鹿だ。 魔力の元、本人を最初から狙うべきだった。 そして、今。彼の前にいる影は、おそらくシャドウだけによるものではない。 一体だけ、というのが逆にその質を意味している。 「・・・」 もう僕の息は上がっている。 で、これを相手するのか。 「他を助けるどころじゃ、ないじゃん」 意識せずとも、自嘲気味になってしまった。 そんな自分を振り払うかのように、目の前に敵に、攻撃を開始した。 |
鋭く上がった火柱に、Pespの反応が一瞬遅れた。 それでも、相手の狙いは利き腕。スピナーなら、一番警戒している場所である。 ギリギリの回避。ひじの辺りをかろうじて掠めただけに留める。 「Pesp!」 「いてえええええええええええええええ」 「うっせえ!かすっただけだろ!」 「でもお前、ばい菌とか入ったらどうすんだ! 俺の右手が4つくらいになるかもしれんぞ!」 「なんねーよ!」 怒号を飛ばしつつ、kUzuは内心ほっとする。 軽口を叩けるってことは、まだ余裕はあるようだ。 とはいえ、そうこうしている内にまた距離をとられてしまった。 aaaaさんとbAKaさんは、スタイル的に遠距離攻撃が得意そうだから、 出来るだけ近接戦闘に持ち込みたいんだが、上手いタイミングで距離をとられてしまう。 流石、というか。 しかし、その「流石」な相手を倒さなくてはいけない状況なのだ。 「Pesp」 「おう」 「少し攻め口を変えようぜ。なんか良い案ないか?」 相手が牽制に飛ばしてくる攻撃を軽くかわしつつ、Pespに問う。 「んー、そうか。実は、ずっと考えてた事があるんだが」 「なんだ?」 「相手のアレ、やってみないか?」 「アレ?」 「おう。つまり、俺の魔力をkUzuが精錬して、どーんっていう」 「・・・なるほどね」 Pespの魔力自体の量は、確かに折り紙つきだ。 それを俺が上手く変換できたら・・・ 「いや、でも俺そういうタイプじゃねーしな」 bAKaさんみたいな補助系の人じゃないと厳しい気もする。 「そうか?意外といけるかもしれんぞ」 「それに、今から練習してる暇はねーよ。 それより、他の案はねーのか?」 「んー・・・っと」 2人が大きく飛び退く。 牽制とは違う、強烈な攻撃が来たからである。 「よし、じゃーkUzu、突っこめ」 「ん・・・1人でか?」 「考えがある。援護するから、とにかく思いっきり行け」 「・・・分かった」 kUzuはうなずき、ペンを改めて回し出す。 鋭いパス。何より、キレを重視した組み立てである。 一気に、2人に向かって走る。 そうはさせまいと、火炎が襲う。 しかし、これをPespの爆撃が防いでくれる。 「よし・・・」 いける。Pespの援護が上手い。 あと2、3発防いでくれれば、確実に攻撃を入れられる距離になる。 1歩前の足元に、魔力が滲みこんだのが分かった。 そこから、火柱が上がるだろう。けど、恐れる事はない。Pespが防いでくれる。 大丈夫だ、Pespが・・・ Pespが・・・ Pesp・・・あれ? 「うそお!?」 火柱が完全にフリーのまま襲いかかってくる。 必死に方向転換、後ろに飛び退く。 目の前、直撃まで数十cmのところで、かろうじてかわせた。 「あぶなっ・・・おいPespっ」 何をやってるんだ、と文句をつけようと後ろを振り向く。 が、いない。 「マンマミーアアアアアアア」 叫びつつ、Pespが怒涛の攻撃を放つ。 耳を劈く爆発音。 連撃を打ち終えると、PespがkUzuの所まで退がって距離をとった。 「てめえ・・・俺は囮かよ。あやうく死ぬとこだったじゃねえか」 「まあ、そういうこともあるって。 それより、数発入った。畳み掛けるぞ」 「ったく」 かなり釈然としないが、効果があったならとりあえずよしとしておこう。 Pespが再び2人のほうへ跳ぶ。よし、俺も・・・ 「!」 後ろから、突然の気配。 自分の首を正確に狙ってきた刃を、すんでのところで抑える。 「な・・・」 自分に襲い掛かってきた人物は、他でもなく、 DaReKaであった。 「まさか・・・」 DaReKaさんの向こう側。そこに、SEVENの影の姿は見えない。 これが意味するのは―。 |
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