投下するスレ 12

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森の中を駆ける、2つの影。key3と、兵卒。

「key3、嫌な予感とは一体なんだ?」

兵卒がそんな質問をぶつける。

「予感といっても、何か思うことがあるのだろう」

「そうですね、確かにあります。
単純に、俺がいない今は、一番狙い時だということです」

そう、key3は言い切った。
自分が今のJEBで一番の回し手だと暗に意味した発言。
しかし、それを驕りと捉えられる人物など、この世界に存在しない。

「確かにそうではあるな。少し迂闊だったかもしれんな」

「そらに、もしそうだとしたら、もう1つ心配があります」

「ん、もう1つ?」

兵卒が聞き返す。計算は答えて、

「私が居ないと相手が知って攻めているとなら、
こちらの勢力に内通者が居る事を意味しますから」

「内通者、か」

しばらく間をおいた後、兵卒が聞いた。

「計算、お前は内通者に心当たりがあるのか?」

「・・・、そうですね・・・あるといえば、あるのかもしれません」

「そうか」

曖昧な言い方をする計算に、兵卒はそれ以上聞くことはしなかった。







「imuさん」

coco_Aが、対峙した人物に言う。
王宮東の少し開けた場所。。
わずかにある植物以外は何もなく、ただ石畳が広がっている。

「あなたは私達の敵なんですか?」

じっと目を見据えながら、聞く。

「・・・、coco_A。僕達の計画の、邪魔をしないでくれるかな」

「しかし、計算さんと」

coco_Aの言葉をさえぎって、imuのペンが始動した。

「(やるしかないのか・・・)」

流石にストレートに聞き過ぎたかもしれない。
反省しつつ、じっと相手の動きを観察する。

imuさんのような独特のリズムでの旋転は、流れを掴むのが難しい。

「・・・っ」

突然視界が暗くなる。

「いつの間に・・・」

警戒していたはずでも、幻術がかけられるタイミングが分からなかった。

coco_Aの目には、ぼんやりとした風景しか入ってこない。
このままでは、戦闘にならない。

「・・・」

相手の魔力が「来る」点を探さなければ。
こういうのはあまり得意ではないが、戦闘中はそうも言っていられない。

ペンを始動。
バクアラで自分の周りに荒めの爆発を起こす。

その爆発の感覚が違う点―左後に向けて、ガンマン系コンボを放つ。
流れ込んでくる魔力を断つ。

「なるほどね、そういうやり方か」

imuがうなずきながらこちらを見ている。

「魔力を断つ、ね。確かに誰かに幻術をかけ続けるためには、魔力を送り続ける必要がある。
そこを突いた、key3とは違った攻略法だ」

「・・・」

「だが、それではキリがないね。僕は構わないけれどね」

「imuさん・・・」

「coco_A、もう一度言おう。僕や、姫の邪魔をしないでくれよ」

「そうは行きません」

「そうかな、僕はそうじゃないと思う」

「・・・?」

imuが再びペンを始動させた。
また、幻術がcoco_Aを襲う。

ゆがむ視界の中で、coco_Aは考えていた。

「(imuさんは一体・・・)」

今日の言動もどこかおかしい。やはり、何かある。

どうする。
imuさんは敵なのか、味方なのか。

もし味方なら、何かのサインだと思う。
理由があって直接は伝えられない、隠れた意味があるはずだ。
だが、もし本当に敵ならば・・・


「・・・」

再び、coco_Aがimuの幻術を振り切った。

「分かりました。繰り返しましょう、何度でも」

そこで、いったん言葉を切る。そして、付け加えるように、

「・・・どちらかが、力尽きるまで」

「そうか」

imuの表情は冷静を保っている。

そのimuの後ろ、王宮中心の建物。
窓が凍りついたのが見えた。

「(姫はあそこか・・・)」

いも、頼んだぞ。そう心の中で呟き、coco_Aはimuの攻撃に備えた。







王宮内の階段・廊下を走る。

「うわぁっ」

背後から追ってくる氷の槌。
次から次へと生まれる氷に反撃する暇が無く、戦闘直後から逃げ回るだけになっている。

「・・・」

そして、この廊下はこのまま少し行くと行き止まりになってしまう。
多分相手もそれを分かってて、追ってきている。
なら・・・

視線の先に壁が見えた。

その瞬間、いもの旋転が動きを変えた。
安定感抜群のスプレッド。

衝撃波が一直線、突き当たりの壁を吹き飛ばした。

「!」

後ろから追ってくる人物が、意表を突かれたような声を漏らす。

ここは4階、そこそこの高さはあるが、旋転を用いれば飛び下りれなくはない。
ぽっかりと空いた穴に向かっていもは疾走し―絶壁の直前で後ろを振り返り、衝撃派を放った。

行き止まりを強引に打開。そして、そこから飛び降りると見せかけて、反転して攻撃。

攻めに転じるためにわざわざ張った二重のフェイク。
それは、いもの敵に対する強い警戒心を表していた。

いもが見つめる先。意表をついたはずの攻撃は、氷壁によって防がれていた。

「やるわね」

透き通った氷の間から見える、美しいその姿。
氷の女王、姫ことayshである。


「うー」

今のでも防がれちゃうのか。ちょっと自信あったんだけどなあ。

まあでも、姫さんはバランスのとれたスキのない旋転で知られてるし、
出し抜いて一発入れるのは難しいタイプの人なのかもしんない。

「姫さん・・・」

いもの問いかけに姫は答えず、再び攻撃が放たれる。

今度はいももその場を動かず、氷を打ち砕いて対処する。

猛攻、と呼ぶに差し支えないが、いもが相手できないものではない。
姫も、近年の活動が活発というわけでもない。
戦闘も久しぶりなのかもしれない。本調子だったら、多分もっとキツイ戦闘になる。

・・・本調子じゃないのに、さっきの攻撃は防がれちゃったのか。
やっぱりへこむなあ。


姫の攻撃は続く。
長距離走をしている人のように、一定の量・質での攻撃が続く。

「・・・」

スキを見て、姫への攻撃を放ってみる。
しかし、瞬時に氷がそれを阻む。

「むー」

やっぱり、こっちの攻撃は見切られている。
しかし、ならもっと強い攻撃が来ても良い気もしてきた。

何か、狙いがあるんだろうか。



「早くしなさいよ・・・」

そんな姫の呟きは、氷が砕ける音にかき消され、いもの耳には届かなかった。







あと6つ。
一気にいけるかな、うん。

塔の上。
toroは、相手を見据え、そしてひとつ気合を入れた。

ペンが加速する。自分の目で完全に追えてはいない。
ただ、指が覚えている。

爆雷。ペンが空中に放たれる。
着地までの数秒。見えない糸が、影の周りに無数現れる。

動きを止めれはしない。けれど、誘導は出来る。

ペンが下りてくる。

6つの影の頭部へ、照準が・・・定まった。

ペンが着地。
人差し指・親指の上で余韻を残して回り、そして再び手の周りで踊った。

強烈な火球が6つ。
溜めに溜めた魔力を孕んで、炸裂する。

少し間があって、影は次々と消えていった。

「よ・・・しっ」

toroの息は荒い。かなり飛ばして相手を倒した。

多分、もうindexさんに力は残っていない。残っていたとしても、たいした相手ではない。
止めを刺すより、他のスピナーの手助けに行く方が先だな。

塔の階段に向かおうと、後ろを向いた。
そして、そこにいる姿を見つけた。

「・・・indexさん」


indexさん本人がそこにいた。
身を呈してでもここからは逃がさない、という事だろうか。

「悪いですけど―」

どいてもらいますよ、と言おうとした。
だが、言えなかった。

indexの前に、再び影が現れる。
その影が、今までの物とは違うと、toroはひと目で理解した。

「馬鹿だなー・・・僕は・・・」

一体何故、気付かなかったのか。

indexさんは影の使い手。だが、彼は、シャドウしか使えないわけでもない。
安定感のあるコンバク・パス等、いくらでも他に売りもある。

さっきの影のみでの応酬は、余力を残した上での戦闘だった。
魔力の量はあったかもしれないが、旋転自体はいたって単純。

それを正面から相手するなんてね。本当に馬鹿だ。
魔力の元、本人を最初から狙うべきだった。

そして、今。彼の前にいる影は、おそらくシャドウだけによるものではない。
一体だけ、というのが逆にその質を意味している。

「・・・」

もう僕の息は上がっている。
で、これを相手するのか。

「他を助けるどころじゃ、ないじゃん」

意識せずとも、自嘲気味になってしまった。
そんな自分を振り払うかのように、目の前に敵に、攻撃を開始した。







鋭く上がった火柱に、Pespの反応が一瞬遅れた。
それでも、相手の狙いは利き腕。スピナーなら、一番警戒している場所である。
ギリギリの回避。ひじの辺りをかろうじて掠めただけに留める。

「Pesp!」

「いてえええええええええええええええ」

「うっせえ!かすっただけだろ!」

「でもお前、ばい菌とか入ったらどうすんだ!
俺の右手が4つくらいになるかもしれんぞ!」

「なんねーよ!」

怒号を飛ばしつつ、kUzuは内心ほっとする。
軽口を叩けるってことは、まだ余裕はあるようだ。

とはいえ、そうこうしている内にまた距離をとられてしまった。
aaaaさんとbAKaさんは、スタイル的に遠距離攻撃が得意そうだから、
出来るだけ近接戦闘に持ち込みたいんだが、上手いタイミングで距離をとられてしまう。

流石、というか。
しかし、その「流石」な相手を倒さなくてはいけない状況なのだ。

「Pesp」

「おう」

「少し攻め口を変えようぜ。なんか良い案ないか?」

相手が牽制に飛ばしてくる攻撃を軽くかわしつつ、Pespに問う。

「んー、そうか。実は、ずっと考えてた事があるんだが」

「なんだ?」

「相手のアレ、やってみないか?」

「アレ?」

「おう。つまり、俺の魔力をkUzuが精錬して、どーんっていう」

「・・・なるほどね」

Pespの魔力自体の量は、確かに折り紙つきだ。
それを俺が上手く変換できたら・・・

「いや、でも俺そういうタイプじゃねーしな」

bAKaさんみたいな補助系の人じゃないと厳しい気もする。

「そうか?意外といけるかもしれんぞ」

「それに、今から練習してる暇はねーよ。
それより、他の案はねーのか?」

「んー・・・っと」

2人が大きく飛び退く。

牽制とは違う、強烈な攻撃が来たからである。

「よし、じゃーkUzu、突っこめ」

「ん・・・1人でか?」

「考えがある。援護するから、とにかく思いっきり行け」

「・・・分かった」

kUzuはうなずき、ペンを改めて回し出す。
鋭いパス。何より、キレを重視した組み立てである。

一気に、2人に向かって走る。

そうはさせまいと、火炎が襲う。
しかし、これをPespの爆撃が防いでくれる。

「よし・・・」

いける。Pespの援護が上手い。
あと2、3発防いでくれれば、確実に攻撃を入れられる距離になる。


1歩前の足元に、魔力が滲みこんだのが分かった。
そこから、火柱が上がるだろう。けど、恐れる事はない。Pespが防いでくれる。
大丈夫だ、Pespが・・・

Pespが・・・

Pesp・・・あれ?

「うそお!?」

火柱が完全にフリーのまま襲いかかってくる。

必死に方向転換、後ろに飛び退く。
目の前、直撃まで数十cmのところで、かろうじてかわせた。

「あぶなっ・・・おいPespっ」

何をやってるんだ、と文句をつけようと後ろを振り向く。
が、いない。

「マンマミーアアアアアアア」

叫びつつ、Pespが怒涛の攻撃を放つ。
耳を劈く爆発音。

連撃を打ち終えると、PespがkUzuの所まで退がって距離をとった。

「てめえ・・・俺は囮かよ。あやうく死ぬとこだったじゃねえか」

「まあ、そういうこともあるって。
それより、数発入った。畳み掛けるぞ」

「ったく」

かなり釈然としないが、効果があったならとりあえずよしとしておこう。
Pespが再び2人のほうへ跳ぶ。よし、俺も・・・

「!」

後ろから、突然の気配。

自分の首を正確に狙ってきた刃を、すんでのところで抑える。

「な・・・」

自分に襲い掛かってきた人物は、他でもなく、
DaReKaであった。

「まさか・・・」

DaReKaさんの向こう側。そこに、SEVENの影の姿は見えない。
これが意味するのは―。




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