投下するスレ 16

前へ



「・・・」

んーと、ayatoriさんらが攻めてきたのは、いつ頃だっけか。
ふと、眼前に広がる空を見て思う。

随分日は傾き、寝転がって真上を見上げる自分の視界には太陽は入っていない。

石でできた床の上に寝転がる、というのは、まあそこまで気分は良くない。
けど、少し疲れすぎた。もう立てない。

「・・・ん」

気配が近づいてきた。
これは、えーと、とりあえず敵ではないな。

「toroさん!」

「あ、ここあさん」

「大丈夫ですか!?」

焦った声色だ。そりゃそうだろう。
なんせ今の自分の状態は、傍からは倒れてるように見えるんだから。

「はい、なんとか」

「indexさんは?」

返事の代わりに、Vサインを作ってcoco_Aに示す。

「・・・、倒したんですか?」

「そーですね。無理矢理でしたが」

無理矢理という言葉は我ながらぴったりだな、とtoroは思った。

「最後は、まあそうですね、意地で倒しました」

「そうですか・・・心配は無用でしたね。
えーと、動くのは厳しいですか?」

「あの、ちょっと疲れちゃったんで、もう少し休んできます。
先行ってて下さい」

「分かりました。無理はしないでくださいね」

toroが小さく首を上下させたのを視認して、coco_Aは去って行った。


「んー」

toroの耳には、coco_Aから今聞いた言葉が残っていた。
心配は無用でしたね、というフレーズだ。

僕は心配をかけていたらしい。

それがどういう心配なのか、詳しくは分からない。けど。

とりあえず、僕は自惚れていたようだ。

余計な事を考えず、ただ自分の敵にしっかり挑むべきだった、ということだろう。

相手との決着は、さっきも言ったように無理矢理だった。
組み立てとか戦術とか、そういうのはまるっきりない。
自分でも笑えてくるような戦闘だった。

そんな風になった自分が、悔しくないと言えば嘘になる。

だけど、今は、むしろ気分がいい。
視界がすっきりしている。

「・・・、まーだいじょーぶでしょ」

coco_Aさんがわざわざ様子を見に来てくれて、休む事も許可してくれた。
状況は良い感じなんだろう。

まだ戦闘は続いているのは間違いない。
けど、他のスピナーさん達、みんな強いから。

この場所で、影を相手に、SEVENに防御を任せたように。
信じればいい。







「よし、行くぜ」

「おっけ」

kUzuに、そんな掛け声が聞こえた。やっとか、と呟く。

「kUzuー!退けー!」

Pespの掛け声に、鋭いカウンターを決めて、後ろに跳ぶ。


Pespのペンが躍動する。
複雑に練りこまれた技の数々。

その横で、NIKooもペンを回す。
だが、本気ではない。流すような旋転。
その集中は、自らのペン以外の所にあった。


「・・・来たぜ」

そんな呟きが聞こえるのと同時に、
Pespの周りを漂っていた空気が、さっと色を変えた―ようにkUzuには感じられた。
NIKooの頬がふっと緩む。味わった事のない感覚に、思わず出た表情であった。

「よし・・・」

NIKooがひとつ頷き、手を3人の方にかざした。

そして。
惑星組の周りを囲うように、5本の蔓が現れる。

「うはっ」

Pespが感嘆の声を漏らす。

その蔓から更に、大小さまざまな蔓・葉・棘が咲き乱れるように出でて、3人に襲い掛かる。

上手くいった、ということだろうか。
Pespの魔力を用いた、NIKooによる攻撃。
相手の見よう見まねだが、NIKooの順応能力ならあるいは、と思っていた。


「行った、か?」

これは決まったんじゃないか、とkUzuは思った。

「・・・ちっ」

だが、NIKooは舌打ちをすると、またペンを始動させる。

豪快で強烈なNIKoo、とPespの攻撃だったが、aaaa・bAKa・DaReKaはそれぞれに打ち破っていた。

「惜しい」

「惜しくねーよ。
最後の最後で制御しきれてねえ。流石に手数は出るが、これじゃ倒せねえよ」

らしい。

「いや、でも今のはよく相手が防いだだろ」

kUzuは、惑星組の方を見ながら言う。
相手の3人が、こっち、特にNIKooを凝視しているように見える。

「(なんだ?)」

そして、惑星組の動きが変わった。

「おいPesp、もういっか・・・うおっ」

NIKooが飛び込んできた攻撃を受ける。

「・・・、ちょっと待て、ありゃ何だ!?」

NIKooの視線の先。
aaaaが魔力を練っている。だが、雰囲気が明らかに違う。
今までよりもっと荒々しい魔力を、どんどん溜め込んでいく。

あんなの、一体どうする気だ?
そんなに魔力を溜めても、aaaaさん本人やbAKaさんでも制御しきれないはずだ。

「・・・まさか、3人で?」

Pespがぽつり、と呟いた。

「――!」

そんなこと出来ない、とは言いきれない。
そして、そんなんが出来たら・・・

kUzu、Pespは同時に駆け出した。NIKooも攻撃を開始する。

しかし、Pespの連続する爆撃を、bAKaが摘む。
その隙間に撃たれたkUzuの雷撃は、DaReKaが防ぐ。
NIKooの植物群も、同様。

そして、aaaaが、完了させた。

bAKa、DaReKaもさっと引き、3人が並ぶ。

そして、その前に、巨大な火球。
放つ光が、持っているエネルギーの強大さを表していた。

「・・・っ」

やばい。そう、kUzuは直感する。
これは、もう受けるとか、そういう次元のもんじゃない。

逃げるしかない。けど、逃げれるのか?

「kUzuっ!」

NIKooの言葉にkUzuがピクリと反応する。
いつの間にか、PespやkUzuと同じ位置まで駆けてきていた。

「15秒稼げ!」


惑星組の出した手に、NIKooも一瞬圧倒された。
だが、素早く頭を切り替え、状況を分析する。

こんなもんがあるんなら、さっさと出せばいい。
でも、こんなギリギリまで取っといたのには、理由があるはずだ。

恐らく、リスク。そりゃそうだ。こんなん使っといて、反動がないとかありえない。

そして、そのリスクのあるもんを出したのには、きっかけがある。
そのきっかけとは何か。
タイミングを考えて、該当するのは、俺とPespの合同の攻撃。
あれが完成される前に決着をつけよう、と考えたってこと。

それは逆に、この攻撃が完成する可能性があるって事でもある。
相手はこれの元ネタ、つまり専門家。俺やPespより信頼できる見解だ。

なら、それをやるしかねえだろ。
で、決まったら。
俺達の勝ちだ。

「Pesp!」

「おー」

Pespのペンが動き出す。
なんとか、制御しきってやる。

「15・・・」

って、結構長い。けど、やるしかないだろ。
kUzuは腹を決めて、ペンを始動させる。。

火球がこっちに向かってきた。思いのほか速い。
が、十分反応もできる。

最初から全力だ。

1軸、2軸の周りをペンが踊る。
kUzuの豪快なスプレッド。

「・・・」

やっぱ15秒って長い。
スプレッド一発じゃとても稼げやしない。

ペンは止められない。パスで体勢を整えて、更にアラウンド。

火球がじりじりと迫る。強い。圧力が半端じゃない。
でも、負けれない。必死に指を、ペンを動かす。

耐える。

耐える。

そして、限界ギリギリまで旋転を続けて、
これが最後だ、と言わんばかりに2軸の周りでペンを躍動させる。

最後にひときわ大きな雷撃を撃って、kUzuの攻撃は止んだ。


何秒稼いだのか、kUzuは分からなかった。

が、十分な時間を稼げた事を、後ろの気配が教えてくれた。

「乙」

Pespが言う。

そして、NIKooの攻撃が火球に向かって放たれる。

天を劈く爆発音。

kUzuは、炸裂する瞬間素早く距離をとったにもかかわらず、吹き飛ばされそうになる。

「・・・うお・・・」

土煙が晴れる。

そこに、もう火球はなかった。


「kUzu!」

「おう!」

自分の横を走って駆けるPesp。
その後に続く。目標は、当然惑星組。

さっきまでの迫力はない。明らかに力を使い果たした、って感じだ。

Pespの攻撃。細かい爆撃を連発。
各々が何とかガードするが、もっとスキだらけになる。

素早く相手の懐に潜りこみ、kUzuが雷撃を放つ。
確かな手応え。3人とも、確実に下腹部に、入った。

「・・・よーっしゃ」

拳を握るPesp。

3人は膝をつき、そして倒れ、空気に溶けるように消えていった。

「決まったな」

NIKooが歩いて近づいてくる。

「NIKoo、お前」

「ああ、正解だったな」

さっきの、火球を破った攻撃。
それは、NIKooが普段操る植物によるものではなく、Pespが普段使うような、単純な「爆撃」だった。

「Pespの力を使うわけだからな。ギリギリで変えた」

「・・・、お前爆撃なんてしたことあったのか」

「は?ねーよ、こんなダセえ攻撃。ったく、もう二度とやらねえからな」

「だ、だせー?」

Pespがなんだかショックを受けているが、それよりもNIKooの発言にkUzuは驚いていた。

いきなりやった事もない攻撃を、しかも自分以外の魔力でやった、ということになる。

「あー、腹痛え」

そう言って、腰を下ろすNIKoo。
この男の実力は計り知れないな。

「ださいて・・・ださい・・・」

まだ何か呟いているPesp。
それを見て、kUzuはいや、と考え直す。

いくらNIKooが凄いと言っても、この攻撃の元となったのはこいつの旋転。
となると、むしろ凄いのはPespの方なのかもしれない。

こいつらはやっぱすげーな。
俺も頑張らないと、な。







透き通った水の刃がろひとtaroの間に放たれ、2人を分断する。

その動きを予測していたいもが、taroに迫る。

打撃をいくつも打ち込む。
taroは防御する、が、いもの攻撃の勢いに押されて後ろに下がる。
Bonitoの水の刃が、壁となって待ち受けている方へと。

瞬間、Bonitoの嵐のような連続攻撃が始まる。

Bonitoのペンが加速していく。
複雑な動きを、まったく滞ることなく、Bonitoの指はこなしていく。

それを救出しようとろひが駆ける。
が、間にいもが割って入る。

「そこは通さないですよ」

ろひの斬撃。いもは的確な打撃で受けていく。

総合的な能力は凄いけど、ろひさんの攻撃自体はそこまで猛烈じゃない。
僕でも、十分対処できる。

後ろから、水が暴れる音がする。
しかも、だんだん強烈になっていく。

それを自分越しに見ているだろうろひが、さっと後ろに退く。

そして、加速をつけて一気に自分を「抜き」にかかった。

「―っ」

地を蹴った後、飛ぶように加速し、動きを変える。
彼の周りだけ、無重力のようだ。

自分に、そしてその後ろのtaroさんに、高速で迫るろひさん。
その姿を見て、いもはペンを加速しつつ、じっと待った。

今、ろひさんの魔力は、移動にほとんど使われているはずだ。
防御をする余裕はないはず。taroさんの危機に、ろひさんも賭けに出ている。

つまり、一発入れば勝負が決まる。

taroさんの邪魔をさせない、というのも大事だ。
けど、これもBonitoさんが作ってくれた「スキ」だ。

だから、ここで決める。

ろひさんが近づいてくる。

一瞬自分の目の前に現れた後、一気に自分を飛び越えて―

その瞬間、いもは溜めていた力を込めて、真上に向かって空気砲を放った。

意表をついて上から飛び越えようとしたろひ。
その瞬間まで、待ち、そして「抜いた」とろひが感じた瞬間に攻撃は放たれた。

「よっし」

いもの声が漏れる。
ろひは、いもを飛び越えた数m先に着地し、
そこで崩れ落ちた。


後ろを振り返り、ろひの姿が消えていくのを、いもは確認した。

そして、その向こうで、水が目にも止まらぬ速さで撃ち続けられている。

助太刀を、と思って足に力をこめたが、
そこで攻撃が止んだ。

水が引いた後、そこにはtaroさんの姿は無かった。

「・・・終わった、のかな?」

「ああ」

いつの間にかいもの横に来ていたBonitoが答える。

ペンをひと回しして再び水を動かす。
水は、taroさんのものらしきペンを運んできた。

「お疲れ」

「おつかれです!」

Bonitoが差し出した手をぱちんと叩いて、いもが答える。

「どれ・・・と、他も大体カタがついたようだな」

Bonitoが塔の上、裏庭と順に目をやる。

「後は、ayatoriさんだけかな」

最後に、門の方を見ながら、Bonitoが言った。







カツーン、という音が響く。

階段を下りてくる足音のようだ。

「・・・、え?」

Mizmが、現れた人影を見て、驚愕する。

はさみは何も言わず、ただじっと視線を放っている。

「よう。ちょっと、人が来る予定があるんでな。ここで待たせてもらう」

「・・・人?」

「気にするな。
ああ、そうだ。JEB勢がayatori達を倒しそうだ。おめでとう」

「・・・」

まったく気持ちのこもっていない祝福に対し、2人は何も答えない。

「さて、そろそろ俺も忙しくなる・・・」







「・・・、え?」

337が、大きく目を見開く。

「ちょっとま・・・どういう・・・」

337は、王宮内の地下に居た。

地下には古い書物などが安置されている所もあるが、
多くの部屋は空き部屋であり、人もめったに寄り付かない。

そんな所に人が入った事に違和感を感じ、調べに来ていた。

そして、階段を下りた先の長い廊下。

その突き当たり、一番奥に。
血だらけで倒れている人影があった。
慌てて駆け寄った337は、その顔を見て、さらに驚かせられることになった。

「・・・まさ、か」

337の顔が青く染まる。
倒れている人物が息をしているのを確認すると、
その人を背に乗せ、337は駆け出した。




次へ
 
ページトップへ移動

サイトトップへ移動