投下するスレ 18

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「・・・、え?」

coco_Aが絶句する。

「どういう・・・」

「Saizenさんが敵で、RYOさんは彼にやられた・・・としか思えない。
じゃなきゃ、Saizenさんが姿を見せてるはず」

337の声が、妙に響く。
続いてtoroが口を開く。

「塔の上で、僕とSEVENが装置と戦ったときなんですけど、
あの時、僕とSEVENの次に装置にふれたのは、Saizenさんです。
『違和感がした』、とか言って、戦闘が終わった直後に現れて。
よくよく考えると、タイミングが良すぎでした。 データの回収の為に来た、と考えればつじつまが合います」

coco_Aの頭の中で、記憶が掘り出されていく。

確かにそうだ。いや、それだけじゃない。

「方針を決める会議でも、Saizenさんが一番積極的に意見を出して、
それに沿う形で、こっちの動きが決まっていた・・・」

Saizenさんが、JEBの動きを誘導していた・・・?

coco_Aは、RYOの顔を見ながら、彼の言葉を思い出す。

『今日は皆、随分感じが違ったぜ。Saizenとかな』
『普段はもう少し回りの様子を見てから発言する』

RYOさんは、あの時から・・・。

「それに、計算さんが国外に行ったのも、Saizenさんの発言からです」

toroが言う。そうだ。それを提案したのも、彼だ。

「・・・、じゃあ」

さっきのayatoriの表情が、coco_Aの頭に浮かぶ。

「この壁の、首謀者は、Saizenさん?」

「確かに、Saizenなら・・・outsiderとは親しいわね。
outsiderは自分からこういうことをするタイプじゃないし、
その組み合わせなら、首謀者は、Saizenね」

姫が言う。

「う・・・」

そこで、337の背のRYOが、うめき声を上げた。

「RYOさん!」

「・・・あ・・・、Saizen、は?」

「RYOさん、落ち着いて。一体、何が?」

「・・・ん・・・」

周りに目をやるRYO。
ayshとimu、それにJEB勢が一緒にいることを視認する。

そして、何となしに状況は察したように、

「すまん・・・俺のミスだ・・・」

と言った。

337がRYOを背中から下ろし、横にする。

「Saizen、あいつが、黒幕だ」

RYOは話し始めた。



会議の後、coco_Aに話していたように、
RYOはSaizenの言動・動きに違和感を覚ており、
それ以来、彼を注意深く見るようになっていた。

そして、妙に消極的で後手に回っていくJEBの対応。
それをそれとなしにSaizenが誘導していることに気付いた。

確信を持ったのは、ayatoriが攻める直前の、門の前であったデモらしきもの。
それに関しても、周りを制して自分が止めに行った。
Saizenが行かなければならない理由は無かったにも関わらず、だ。

そこで、RYOはSaizenが協会と内通していると判断し、Saizenを呼び出した。


「・・・そこで、見誤った。Saizenなら、説得できると思ったんだ」

RYOが悔しそうに言う。


「Saizen、お前、協会側についてるだろ」

「・・・突然何を言い出す?」

「普段とは違う行動が多すぎるぜ。
しかも、お前が提案した事が、片っ端から裏目に出てる。
流石にそろそろ、俺以外の奴も気付き始める」

「・・・」

「何を考えてるんだ。今の協会は、明らかにおかしい。
今なら間に合う、こっちに戻れ。
そうすれば、上手く出し抜いて、事を荒げずに終えられるかもしれない」

「RYO」

Saizenがそう言い、RYOの方へ一歩近づく。

「・・・流石に良い観察眼をしているな」

「Saizen」

「だが、ひとつ間違いがある」

もう一歩。

「俺が協会やayatoriの協力者なんじゃない。
俺が、利用してるんだよ」

そう言い放つや否や、Saizenの猛攻がRYOを襲った。



「・・・あいつが突然襲ってくるとは、思いもしなかった。
俺1人で対するべきじゃなかった・・・許してくれ」

RYOは心から申し訳なさそうに言った。

しかし、自戒の念にとらわれているのはRYOだけではなかった。
そんなことを、まったく想像できなかった事に、全員が責任を感じずにはいられなかった。

「RYOさん、大丈夫です」

coco_Aが声をかける。

「ayatoriさん達の勢力は、倒しました。
現状、私達は嵌められた形になってますが、 こんな壁、すぐに破れます。
それに、この包囲網の外に、1人いる」

すっと、門のところに目をやるcoco_A。

imuがひとつ頷いて、

「そうだな。
ayatoriが、黙っていない」







「大体、お前あんなやり方で何とかなる気でいたのか?」

呆れたような笑みを浮かべつつ、Saizenが言う。

「あんなやり方、民衆がついてくる訳がない。
政治とは、民衆どもを惹きつけることが一番重要だ。
国は人から出来るものだからな。少し頭を使えば、簡単に利用はできるが。
しかしまぁ、本当に、簡単に俺の言う事を信じたものだ・・・俺は助かったがな」

Saizenの嘲りを、拳を握り締めてayatoriは耐える。

「何を、考えている・・・? あんな壁で、王宮を囲んで」

「ああ、確かにあんな壁、あまりスマートなやり方ではないかもしれないな」

Saizenがふう、とため息のような仕草をする。

「本当なら、お前達が勝ってくれるのが一番楽だった。
お前等なら口だけでもなんとかなるからな。その場合、JEBの戦力も失わずに済んだ。
まあ、勝率は良くて3割と踏んでたからな。順当と言えば順当か」

「・・・僕達が負けるのも、想定内だと」

どれだけ強く手を握り、爪を食い込ませても、ayatoriは痛みを感じなかった。
あまりに強く湧き上がる感情で、痛みなど感じる余地は無かった。

「そうだ。で、こうして第二段階へと移行となった。それだけの話だ」

対照的に、Saizenの表情は崩れない。

「JEBを、奪うつもりか」

「ああ。お前と同じで、な」

「っ・・・」

「はは、そう怒るなよ。
ああ、そうだ、お前も一応協力者だな。
俺が国を手に入れたら、何か地位でも与えてやろうか?」

「舐めるのも、いい加減にしろ」

ayatoriが、肩を震わせる。

「絶対に許さない」

「・・・っ」

はさみはayatoriの言葉に、恐怖を感じた。

もう、ayatoriさんはSaizenさんに敬称をつけていない。
目の前の人物への怒りなのか、自分自身への怒りなのか。
とにかく、ayatoriさんがここまで感情を露にした事は今まで無かった。

「別にお前に許しを乞うつもりはない。
それより・・・さいだーの方も、そう長くは持たないだろうからな。
ぐだぐだ話すのは好ましくない」

Saizenがペンを軽く回す。

「スピナーらしく、話は旋転でつけようか」

渦巻く風が、Saizenの髪を揺らす。

「あなたが、僕に勝てるとでも?」

ayatoriの周りの空気が、震える。

2人の周りで唸りを上げる魔力に、Mizmとはさみは圧倒された。







「ん・・・」

門の辺りに、違和感。
攻撃を受けている。

「始まったか」

JEBの勢力が、壁を崩しにかかったようだ。

outsiderは、東町で一番高い建物の上に陣取っていた。王宮の全体が、ある程度見える。
当然JEB内で一番大きな建造物は王宮だから、見下ろせる訳ではなく、あくまで「ある程度」だ。

自分の左側では、宙に浮かぶ透明色の球体の中で、
cirさん仕様のペンが回転し、美しい魔力を生成している。
それに自分の魔力を合わせて練りこみ、壁に向けて滞りなく力を送り続ける。


随分前から入念に準備をして来たこの防壁。
JEBのオールスターに近い面子に攻められているわけだが、全員戦闘で疲弊もしている。
永久に持つはずなど当然ないが、そうすぐにも破られそうにない。
十分な時間は、稼げそうである。


今のJEBに愛着が無いわけではない。
だが、このまま前菜の計画通りに行くというのなら、その程度の存在だった、ということだ。

物事は、流れのままに存在する。JEBもその例外ではない。

自分が前菜側についているのも、親しくしてきた人物がこんなことを企てた、
それは自分もそうする「流れ」にあるからだ―と判断したからである。

現行のJEBが、生き残るのか。
それとも前菜が、滅ぼすのか。

俺は、当事者でありながら、傍観者である。
何よりの興味は、その流れが、最後にどちらに傾くのか―ということだ。


「ただ・・・」

現状は、明らかに流れは前菜だな。

この位置から見えないが、裏町の方にある地下牢。
壁を繰り出してすぐ、そこにayatoriが向かうのを感じた。

やはり、幼い。

当然、ayatori程の男を、誤って壁の外に放すはずがない。
つまり、わざとこうして、前菜と1対1になるように仕組んだと言う事になる。


それは、ayatoriを相手に勝てる、確たる根拠があるということである。




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